【オンガクシツ vol.1】CHILLOUT Coffee&Records@両国

僕らが好きな空間はさまざまあるけれけど、そこに間違いなくあるのは “良い音楽” だ。

決して音楽を前面に出すお店でなかったとしても、そこには空間を創り出す人のセンスや、こだわりが滲み出ているはず。

どこかにひと捻りのある音選びをし、居心地の良いお店を営むオーナーさん。

彼らに対して、音楽を通したお店のあり方というものを聞いてみたい。

音楽と空間の “質” にフォーカスしたシリーズ、『オンガクシツ』が始まるよ。

vol.1 CHILLOUT Coffee&Records@両国

下町の風情を色濃く残す街、両国。老舗や町工場が残る静かな街の一角に佇むのが『CHILLOUT Coffee&Records』(チルアウトコーヒー&レコーズ)。

大通りに面した大きな窓から店内へと自然光が差し込む、開放感たっぷりのコーヒースタンドだ。

カウンターにはレコードスピーカーが埋め込まれ、壁に沿って置かれた棚からは、セレクトされたアナログレコードがこちらを見つめている。

オーナーの村田さんがセレクトする音楽、そしてコーヒーの香りに包まれる、スローな時間。

忙しない日常から解き放たれる、穏やかな時間が流れていた。

音楽とコーヒーを起点にした対話の空間

音楽とコーヒーという組み合わせ自体は、かなりオーセンティック。

日本には古くからジャズ喫茶という文化が根づいているし、おしゃれなカフェというのは往々にして気の利いたBGMが流れている。

だけどここにほんの少しでもいると、この空間が、カフェや喫茶店と本質的に異なる場であることが分かる。

「ここの原点は、フェスなんですよ。良い音楽があって、美味しい飲みものがあって、知らない音楽にも心踊らされる。あの感覚が最高で。」

なるほど。たしかにジャズ喫茶やミュージックバーのクローズド感とは違う、門戸の広さ、親しみやすさが全体に漂っている。

「音楽やコーヒーのことに限らず、いろんなことをお客さんと話しますね。

常連さん同士の会話が起きることも日常的ですし、やっぱり5坪しかない狭い店ということもあって、自然と会話が発生するんです(笑)」

音楽好きにとって理想の空間は、昔からの考え方をすると、きっと静かで、音楽に集中できて、会話や物音すら憚られるような、そんな空間が頂点に立つ世界。

それに比べて、フェスは音楽を楽しむ場として真逆のアプローチをとる。解放された場で、流れる音楽が自然と一体感を生み、ときとして会話の起点ともなり得る。

そんなコミュニケーションの “起点としての音楽” というあり方が、この小さなコーヒースタンドには生まれている。

いろいろな人が訪れる、下町の “音楽屋”

「アルコールじゃなくてコーヒーにしたいなあっていうのは、飲食店をやりたくなった15、16歳の頃からずっと思ってました。

やっぱり世代も仕事も多種多様な人が来る場所にしたくて」

たしかに、先ほどから取材をしている間にも、いかにも音楽好きそうな若者、子連れのファミリー、地元のおじ様方、はたまた通りがかりのカップルまで、実にさまざまな人が立ち寄っていく。

「場所柄、本当にいろいろな人が来ます。

地元が東京の深川で、今でこそブルーボトルコーヒーさんができたりおしゃれなお店がたくさんありますけど、ほんの数年前までは何もないような場所で(笑)。

お店があまりない街で、いろんな人が気軽に来れるお店にしたいなと思って、この店を出したんです」

かなりローカル感が強い、いわゆる “下町” と呼ばれるエリア。いわゆる都会的な若者が集まってくる場所ではないし、特定の音楽好きな層がいるエリアでもない。

ただ、だからこそ誰が来るかわからない門戸の広さ、音楽とコーヒーから生まれる広がりが魅力に感じられる。

「最近、このあたりにお店を出したいんですと相談に来る若いオーナーさんが、けっこういて。

それこそ鳥越にできた『Saladday Coffee』(サラダデイコーヒー)さんもそうですけど、近隣のお店との関わりもできてきましたね」

音楽とコーヒーを起点にした対話、そしてそこから生まれる関わりが、お店を街になくてはならない存在にしている。

最近だと近所のお店でイベントがあるときには、村田さんご自身の選りすぐりのレコードを持ち、DJとして呼ばれることもあるのだとか。

最良の音楽で、最高の空間を味わう

決して広くはない店内。当然ながら、並べておくことができるレコードだってそれほど多くはない。

けれどもそこにラインナップされる音は、心地よい対話のためにコーヒーと同じくらい欠かせないものだ。

「ブラックミュージック、特に90s以降のヒップホップが好きで。トラックの元ネタになったような、70sのファンクもよく選びますね。

今となっては古いJ-POPもあれば、レゲエもファンクもあります。基本的に気に入ればジャンルにはこだわり過ぎず、グッドミュージックなら、って感じで」

やはりいろいろな人に来てほしいというお店だからこそ、音楽も幅広い。そのうえでピンポイントに刺さるものが選び抜かれているのは、さすがの一言。

「初めてのお客さんが来たら、年齢や服装、雰囲気から、あれが好きそうだなあとか、こんなのかけたら話が弾むかなあとか、お客さんのことをイメージしながらかけてます」

足を運んだら、好みの新しい音楽に出会えるかもしれない。サブスクで探すのもいいけど、偶然の出会いが少なくなってきている今だからこそ、貴重な体験のはず。

ずっしりとしたマグカップにコーヒーを淹れてもらい、長椅子に腰掛けながら素敵な音楽を傍らに話せば、「初めまして」から馴染み客になるまで、それほど時間はかからないはず。

新たな音楽の入り口を見つけてもらおう

せっかくなので村田さんに、秋の日曜日にぴったりなアルバムをかけていただいた。

「JOAO DONATOというブラジルのアーティストのQUEM E QUEMとかいいですよ。

ブラジル音楽は独特の哀愁があって、その情熱的な音と合わせて、秋の初め、夏の終わりにぴったりですね。

今日とかもう10月なのにけっこうあったかいから、気分に合うと思います

即答、お見事! ぜひ、僕らにもオススメを…。

「初めて来た人、ブラックミュージックに初めて触れる人にこそオススメしたいんですが、DONNY HATHAWAYのライブ版”LIVE”です。

まず何より捨て曲が一切ないので、ぜひアルバム1枚を通しで聴いてほしいなあと。

ジョン・レノンのカバーが入っていたり、いわゆるソウルミュージックのみならず、70年代の音楽の雰囲気に触れられる名作だと思います」

どんな音楽でも入口は大事だけれど、なかなか知らない音楽を開拓するうえで、自分で入口を見つけるのは難しい。

誰かに教えてもらったり、出会った作品になんとなく触れてみたり。そんな意図しない出会い方があっても、きっと面白い。

音楽とコーヒーと人が生み出す、ここだけの時間。

音楽が人を繋ぎ、コーヒーをさらに美味しくする。最高の気分を味わいながら、話に花が咲く。ここには、僕らの求めていた場が凝縮されていた。

音楽がそこにあることによって、その空間が色を持つ。生き生きとする。そんな体験が日常のすぐ傍らにあると、日々はもっと楽しくなるはず。

ご近所さんだけでなく、さまざまな場所から通う人もいるこちらのお店。少しでも惹かれたら、そのドアを押してみよう。

きっと、素晴らしい音楽とコーヒー、そして時間が待っているはずだから。

今回訪れた場所について

■CHILLOUT Coffee&Records(チルアウトコーヒー&レコーズ)

音楽とコーヒー、切っても切れない2つをこよなく愛する村田さんが営む、小さなコーヒースタンド。ブラックミュージックを中心に幅広い年代、ジャンルから、オーナーの村田さんこだわりの音楽も楽しめる。

住所:東京都墨田区緑2-17-8

Instagram:@chill_out_coffeeandrecords

※営業時間や定休日などは上記Instagramのご参照をお願いします。

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■アイカワ ヨウヘイ – 取材・執筆

とにかく深く、そして、いつの間にか、広く。なにかを突き詰めていくと、ファッションなら音楽や映画、料理ならお酒、というように、いつの間にか他の分野まで興味が広がって、結果それが豊かさに繋がる、と考えています。好きなことは好きなだけ。時間も労力も惜しまず、深く掘り下げて、みなさんの豊かな日々のお手伝いができれば幸いです。

Instagram:@ivy.bayside

■シミズ シュン – 撮影・編集

チトセの代表と編集長、カメラマンを務めています。“僕らが楽しく生きるために” をテーマに、親しい友人から話を聞いているような、そんな等身大のメディアを目指して。「楽しいから楽しむのではない。楽しむから、楽しいのだ。」という言葉を大切にして、日々を生きています。

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ジツカワ タクミ – 編集

“たくさんの人には知られていないけど、強く光るものにスポットライトを当てていく意識” を大切に、街やお店、モノや人に寄り添ってお伝えしていきます。

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2020-10-17|
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