「必ず訪れるべき!」と書かれている、外さない飲食店や雑貨店たち。スタンプラリーをするように、そんな定番スポットを辿る旅。
誰と行ってもいつ行っても変わらないんじゃない? なんて、味気なさを感じた経験がある人は少なからずいると思う。
そんな経験を持つ人に紹介したいのは、大通りを歩くようなゴールデンプランではなく、街の外れ、通りから1本入った路地裏にあるような、ちょっとコアなお店たち。
街を深く探検することで見えてくる、こんなところにあったのか! と思えるような、見つけがいのある街の魅力をご紹介。
記事を読んで「あ! 良いな!」と思ってくれたなら、そのままの勢いで足を運び、自分の五感を思う存分遊ばせてみてほしい。
だからこそ。友達や恋人と訪れるのも楽しいんだけど、あえての1人旅をチトセはおすすめします。その土地に詳しい僕らの友達に、さっそく案内してもらおう!
vol.2 ユウトと、君がまだ知らない横浜
渋谷から電車で1本、30分ほどであっという間に着いてしまう横浜。
横浜といえばみなとみらいや中華街といった、デート向きな街という印象があるんじゃないかな。
横浜駅から数駅のところに位置する黄金町・野毛地区は、そんな横浜のイメージとは裏腹に、 “ディープ” という言葉がぴったりなエリア。
かつて治安が悪いことで有名だった黄金町はアートの街へと生まれ変わり、飲み屋街のイメージが強い野毛には、特別な夜を過ごせるお店がある。
誰かと楽しむのではなく、あえて1人を楽しむ横浜散歩。今日は、大学時代までを横浜で過ごしたユウトに、みんながまだ知らないこの街の魅力を紹介してもらおう。
時刻は夕方16時。京急線で横浜から2駅、日ノ出町駅を降りれば本日の旅がスタート。
1. 街を歩けばアートに当たる
日ノ出町駅から徒歩5分。高架下に突然現れたのは、ガラス張りの箱のような空間。
寒空の下、暖かい光に誘われ思わず立ち止まる。よし、入ってみようか。
ここは、『黄金町アートブックバザール』。アート関連の古本や展示会のパンフレット、アーティストグッズを展示・販売しているお店だ。黄金町はかつて「暗黒街」と呼ばれ、治安が悪いと有名だった街。
そんな黄金町をアートで盛り上げようと立ち上がった、NPO法人黄金町アートマネジメントセンターの方々が運営する古本屋さんなんだって。
学術書だけでなく、ファッションや建築、写真集など、広い意味でアートにまつわる本などが取り揃えられている。
店舗スタッフ兼、アーティストインレジデンス※1で黄金町を拠点に創作活動をされている、アーティストの安部寿紗(アベ カズサ)さんにお話を伺おう。
「もともとこの辺りは治安の悪さで有名だったエリア。でも今では、放課後に子供達が遊びに来るほどになりました。
アトリエの周りで騒がしくするから、たまに私が注意しちゃうことも(笑)。そのくらい、街の治安は回復してきましたね」
ここ黄金町では、『黄金町バザール』というアートフェスティバルが毎秋開催されたり、高架下にはアトリエやギャラリーが建ち並んでいたりと、街とアートが融合したプロジェクトが盛ん。
アートが身近にあることで、街の雰囲気も大きく変化してきたようだ。
もちろんお店には安部さんのグッズも。お米をモチーフにした繊細な作品が並んでいる。他にもさまざまなアーティストグッズが販売されているから、お土産にしてもいいな。
※1 アーティストがある土地に一定期間滞在し、そこで創作活動を行う事業のこと。黄金町には、現在50組ほどのアーティストが滞在している。
2. 心もお腹も満たされて
高架下を散歩しながら歩いていると、いつの間にか街は飲み屋の空気に。気づけば野毛まで歩いてきていた。
街のそこかしこから良い匂いがしてくる。思わずお腹が鳴った。そういえば、お昼から何にも食べてないな。
そう、そんなときに行きたいお店があるんだよね。
レトロな外観の洋食店『センターグリル』は、1946年創業の老舗。ナポリタンにオムライス、ハンバーグ…数あるメニューを見て迷っていると、ご主人が声をかけてくれた。
「あ、ランチメニューも頼めるからね。何時でも出してるの(笑)」
話を聞けば、昔からこの辺りは昼夜問わず仕事をするお客さんが多かったそう。時間帯を分けずランチメニューを提供することになったらしい。
オムライスとチキンカツがセットになった浜ランチ(¥1,050)を始めとし、コスパ満点のランチメニューは種類豊富。これが何時でも食べられるなんて、街に愛されるお店に決まってるよね。
今回注文したのは、センターグリルの顔とも言えるメニュー、ナポリタン(¥720)。
こだわりは、一晩寝かせたモチモチの太麺。余計なものは何も入っていない、シンプルイズベスト! な間違いなしの定番の一皿。
安心する味に、食べる手が止まらない。あっという間に完食してしまった。心もお腹も満たされたところで、次へと向かおう。
3. 偶然の出会い、ミニシアターにて
続いてやってきたのは、横浜でも有数のミニシアター『シネマ・ジャック&ベティ』。
かつてこの辺りは映画の街として栄えていたみたいだけど、今に至るまで営業している映画館は少ない。
1991年に前身である『横浜名画座』を引き継いでから、今もなお愛され続けている場所だ。
シネコンでは上映されないような、ニッチな作品が楽しめるのが魅力的。「ジャック」と「ベティ」と名づけられた2つのシアターで、新作・旧作映画どちらも常時上映されている。
今日は無計画で飛び込んだから、ちょうどいい時間に上映している作品をチョイス。こういう偶然が、思わぬ刺激をくれたりすると思う。
4. 毎日のご褒美に、特別な夜を
映画の余韻からなかなか抜け出せず、ふらりと路地を散歩。さて、そろそろ帰ろうか…と思ったけど、もう少しこの街の空気に浸りたくなった。
駅まで向かう道中で見つけるのは、ジャズ喫茶の看板。少し入りづらいイメージがあるけど、街に溶け込むにはこういうお店が一番だ。
雑居ビルの2階、赤い看板が目印のジャズ喫茶『ダウンビート』。重い扉を開ければ、大迫力のジャズが店内に響き渡る空間が。
正直ジャズは詳しくない。場違いじゃないかな…という心配はご無用。気さくに迎え入れてくれるのは、マスターの吉久さん。
中に入ると、入り口から左右に座席のタイプが分かれている。会話を楽しみたいなら右手のカウンター席へ、大音量の音楽を楽しみたいなら左手のソファ席、という使い分けができる。
優しいマスターの笑顔に緊張も解け、カウンター席で少しお話させてもらうことに。
アメリカの影響を強く受けている横浜は、ジャズ文化が盛んな街。そのなかでもダウンビートは、1956年から続く歴史のあるジャズ喫茶。
3代目だという吉久さんは、もともとお店の常連客。3年前にこの店を引き継いだという。
「野毛は、うちのように昔ながらの店もあれば、最近は新しい店も増えてるんだ。ちょうどいい距離感を保ちつつ、新旧が共存できているのが魅力。うちは常連も多いけど、若い子も遊びに来るよ」
ジャズに詳しくなくても、優しく受け入れてくれるお店。だけど、ジャズを嗜む常連さんの姿がなんだかカッコよくて。いつか、もっと詳しくなって遊びに来たいな。
旅の締めくくりは、音楽と共に。こんな贅沢な時間を独り占めするのも、悪くないね。
1人旅の帰路にて
外に出ると、ひんやりした空気と街の喧騒で酔いが冷めてくる。
彼女とデートで訪れる横浜も、友達と飲み歩く横浜も良い。だけど、自分の感性だけを頼りに旅する横浜は、何倍も味わい深い。
昭和の面影を残しながら、進化し続ける黄金町・野毛地区。
1人旅を通じて新しい街の一面に気づくことができて、街との距離が縮まったように感じる。
みんなにもぜひ、この感覚を味わってほしいな。
次の旅はどこに向かい、誰が案内してくれるんだろう。今から楽しみにしていてね!
僕らの友達について
■中村悠人(ナカムラ ユウト)
Instagram:@yuto_nakamura |
今回訪れた場所
■黄金町アートブックバザール
アート関連の古本や、アーティストグッズを販売している古本屋。中には、昔の展覧会パンフレットといったレアなものも。高架下沿いにはギャラリーやカフェもあり、散歩コースにもおすすめ。 住所:神奈川県横浜市中区日ノ出町2-145番地先 日ノ出スタジオⅢ棟 公式サイト:koganecho.net ※営業時間や定休日などは上記公式サイトのご参照をお願いします。 |
■センターグリル
1946年創業の老舗洋食店。歴史あるナポリタンや、ランチメニューが名物。ボリューム満点でリーズナブルなのが嬉しい。野毛でお腹が減ったら『センターグリル』に決まり。 公式サイト:center-grill.com Instagram:@center_grill ※営業時間や定休日などは上記公式サイトやInstagramのご参照をお願いします。 |
■シネマ・ジャック&ベティ
黄金町駅から徒歩5分。横浜有数のミニシアターで、他では観られないような作品も多数上映されている。毎週上映スケジュールが変わるので、来訪前には公式サイトを要チェック。 住所: 神奈川県横浜市中区若葉町3-51 公式サイト:jackandbetty.net ※営業時間や定休日などは上記公式サイトのご参照をお願いします。 |
■ダウンビート
1956年創業のジャズ喫茶。雑居ビルの2階にひっそりと佇む店内は、まるで隠れ家。大迫力のジャズに酔いしれて、一人の時間を過ごしてみては。 公式サイト:yokohama-downbeat.com Instagram:@downbeatnoge ※営業時間や定休日などは上記公式サイトやInstagramのご参照をお願いします。 |
この記事を読んだみんなにおすすめ
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記事の創り手について
サイトウ ユイ – 取材・執筆
美味しいご飯と良い音楽に目がない20歳。散歩が趣味で、町中華や喫茶店を見つけてはつい寄り道。そんな日常のちょっとした幸せを、記事を通してお届けしていきます。 Instagram:@321.xy |
ジツカワ タクミ – 編集
“たくさんの人には知られていないけど、強く光るものにスポットライトを当てていく意識” を大切に、街やお店、モノや人に寄り添ってお伝えしていきます。 Instagram:@jitsu_tkm |
シミズ シュン – 編集・撮影
チトセの代表と編集長、カメラマンを務めています。“僕らが楽しく生きるために” をテーマに、親しい友人から話を聞いているような、そんな等身大のメディアを目指して。「楽しいから楽しむのではない。楽しむから、楽しいのだ。」という言葉を大切にして、日々を生きています。 Instagram:@shun_booooy |
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