「必ず訪れるべき!」と書かれている、外さない飲食店や雑貨店たち。スタンプラリーをするように、そんな定番スポットを辿る旅。
誰と行ってもいつ行っても変わらないんじゃない? なんて、味気なさを感じた経験がある人は少なからずいると思う。
そんな経験を持つ人に紹介したいのは、大通りを歩くようなゴールデンプランではなく、街の外れ、通りから1本入った路地裏にあるような、ちょっとコアなお店たち。
街を深く探検することで見えてくる、こんなところにあったのか! と思えるような、見つけがいのある街の魅力をご紹介。
記事を読んで「あ! 良いな!」と思ってくれたなら、そのままの勢いで足を運び、自分の五感を思う存分遊ばせてみてほしい。
だからこそ。友達や恋人と訪れるのも楽しいんだけど、あえての1人旅をチトセはおすすめします。
その土地に詳しい僕らの友達に、さっそく案内してもらおう!
vol.3 リュウビと、今変わりゆく日本橋兜町
「今、東京で注目しているエリアってどこ?」
なんてことを友達同士で話す。最近よく話題にあがるのは、 “日本橋兜町エリア” だ。
橋の名前を冠して名づけられたこの街は、東京の歴史を感じる重厚な建築物が並んでいる。
一方でその古き良き景観を活かしつつも、この時代の人々の感覚を捉えたクラフトビールショップやコーヒースタンド、ビストロなどが続々とオープン中。
「カルチャーが生まれるエリアはどちらかというと東京の西側が目立ちがち。だけど、その重心はどんどん東側に移ってきていると思うんだよね」
そう言ってこのエリアをおすすめしてくれたのは、僕らの友達リュウビ。なんでも最近は再開発が進んでいて、各地のキープレイヤーが食を起点とした新たな街づくりを仕掛けているとのこと。
善は急げということで、今回はリュウビが旅の案内人となりエリアの魅力を紹介してくれるようだ。それでは、さっそく行ってみよう!
1. 食におけるDJ的存在『Neki』
旅は日本橋駅からスタート。髙島屋や三越などの老舗百貨店を脇目に、茅場町方面へ向かって歩くこと10分弱。シックな色合いの外観が街に馴染みつつ、一際存在感を放つ1軒のお店が。
ここが最初に紹介するビストロ『Neki』。日本橋兜町の人気の火付け役と言っても過言ではないこちらのお店は、和洋折衷の創作料理が人気。
店内に入るとまず見えるのは、立派なオープンキッチン。カウンター席では、スタッフさんと会話を交わしながら数々の料理を楽しむことができる。
ということで着席。友人と来ても、1人で来ても居心地のいい場所なんだよね。
僕が密かに楽しみにしているのは、料理の説明をしていただくとき。お店に行ってご飯を食べることの意味は、直接料理の説明を受けられることが大きいと思う。
この一手間があるかないかで、お客さんとしてもご飯の楽しみ方が大きく変わると思うんだ。

鶏胸肉とペンネ、サツマイモのグラタン
グラタンのまろやかさのなかで、一際存在感を放つサツマイモの甘さ。

聖護院カブのポタージュ、柚子皮のオイル
柚子風味のオイルが効いていて、ポタージュだけどむしろスッキリとした味わい!
「どちらも日本人にとって馴染みのある食べ物なんだけど、この味わいは今までになくて。日本の食材をフランスの調理方法で作ると、こんな発見が生まれるんだ」
そう話してくれたのは、渋谷の名店『ビストロロジウラ』でシェフを務めたオーナーの西さん。京都、フランスで修行をしたそうで、料理には本格的なフレンチのエッセンスが取り入れられている。
ただ料理を食べていて感じるのは、店内のカジュアルな雰囲気。ジャズやヒップホップなど、料理の本格的な味わいと心地良いギャップを生み出す、軽やかな音色が響く。
「お店を開く際に大事にしていたのは、見た目や装いはカジュアルだけど、料理やドリンクは美味しいものを提供しているお店。
ここ日本橋兜町という街で、誰もが気軽に楽しめるお店を作りたかったんだよね」
西さんは大の音楽好き。店内奥のラックにはセレクトされたレコードが置いてあるので、音楽好きの人はそちらも要チェック。
お店を眺めていると、料理を楽しむ要素はなにも皿の上だけじゃないということに気づかされる。
インテリアやBGMなど、空間全体でたのしむものなんだろうな。
カジュアルフレンチという西さんの哲学はメニューにも。気軽に訪れてほしいから、1品ずつ頼めるアラカルトにも対応。
ビジネスマンのランチに、大切な人とのディナーに、サク飲みの2軒目に。あらゆる人を受け入れる、懐の深いお店なんだ。
“ジャンルがカテゴライズされないメニュー×フレンチの技法”、“歴史を感じる街の空気感×モダンな佇まいの店舗” と、まるでDJのような心地良いミックス感が印象的。
五感を使ってたのしむ食体験を、みんなもぜひ。
2. さまざまな背景を持つ人が交差する場『SR』
大満足のランチをいただいたあとは、ほっとひと息つける時間を。Nekiの隣の細い路地を入っていくと見えるのは、大きな扉が印象的な建物。
ここが2つ目に紹介するカフェ『SR』(エスアール)だ。もともとは築70年の鰻屋『松よし』の一部だったもので、建物の形状をそのまま利用している。
東京証券取引所が近隣にあったことから、株価が “鰻登り” になるという験担ぎもあり証券関係者で賑わった過去があるんだそう。
それではさっそく店内へ。受付では店員さんとの会話もたのしんでみてね。
いつものドリップコーヒーを注文(¥540)。店内の焙煎機で挽かれた豆は中深煎りくらいで、飽きのこない味わい。
「いつもありがとうございます。リュウビさんのように、だんだんと西側からも来てくださるお客さんも増えてきて嬉しいですね」
スタッフさんが言ってくれた通り、ここSRは近隣で働きながらふらりと寄る人、お店を目当てに訪れる人とが交差する場になっている。
所狭しと並んだ絵画や本、そして店内に流れるBGM。カルチャーを感じながら飲むコーヒーは、やっぱり刺激的だ。
本を手に取りぱらぱらと見ていると、ついつい長居してしまう居心地のよさがあって。
「将来的にはコーヒーや音楽を起点に、街に開かれたコミュニティ作りにも興味があるんです」
地域に根差し、日本橋兜町エリアを盛り上げようとしているSR。カルチャーのつながりを活かしてブランドなどとポップアップを行い、さらにこのエリアを盛り上げてくれたら、なんて思ったり。
コーヒーを介し人と人が出会い、どう繋がっていけるのか。1つの店で興っていく盛り上がりが、街とどうリンクしていくのか。そんなことにも思いを馳せながら。
同じ建物内にあるワインショップ『Human Nature』(ヒューマン ネイチャー)と共に、キープレイヤーとしてどんなことを仕掛けていくんだろう。彼らの動きに、目が離せない。
3. 伝統と革新の共存『Omnipollos Tokyo』
1日も終わりに近づいてきた頃。1杯飲みたいと思ったときにおすすめしたいのは、SRの隣に位置するスウェーデン発のビールスタンド『Omnipollos Tokyo』(オムニポヨス トウキョウ)。
にっこりスマイルのブランドアイコンが配されたのれんが特徴的。
“伝統的なものと革新的なものを掛け合わせる” というブランドのコンセプトに合う場所を探していたところ、日本橋兜町の『松よし』の家屋がピッタリで出店が決まったそう。
のれんをくぐり、木の引き戸をスライドして店内へ。
ビールスタンドに入るときの体験としてはいささか違和感を覚えるけど、古き良き街の佇まいから突然目の覚めるようなブルーを目にしたときのギャップに、心は高鳴ること請け負い。
視界いっぱいに映るオムニポヨスらしい色鮮やかなブルーに、70年の歴史を経た木造の屋根裏。
ただブランドのカルチャーをそのままお店にはめるのではなく、日本橋兜町エリアの空気や建物自体の歴史に学び、自分たちのセンスを組み合わせていく。
街が再開発されていると言われても実感しづらい人も、こうやって目の前で既存のモノと今の感覚が溶け合う姿を見ると、より実感がしやすくなると思う。
ちなみに本国スウェーデンでは教会を改装してブルワリーを建てたりと、コンセプチュアルでエッジの効いた店舗の打ち出し方が人気の理由の1つでもある。
ビールの種類は来るたびにいくつか変わっていることもあり、
「3番のビールはどんな味わいなんですか?」
なんて、店員さんとコミュニケーションを取りながら好みのビールを選んでいく。今回はお店で定番の<1.PERIKLES>をいただくことに。
色鮮やかなタップハンドルから注がれるビールを眺める。目の前でふらっと立ち寄り、ふらっと飲める気軽さはビールスタンドならではだよね。
黄金のビールに、東京限定のブランドのロゴマークがよく映える。“カオスでもあり有機的で、遊び心があって活気がある” という、デザイナーが感じた東京への印象が落とし込まれているんだって。
店内奥のテーブル席でいただいてみよう。アートな世界観も楽しめる店舗では、今後イベントの開催も考えているそう。
2杯目には、<Brush>を。ビールをスラッシー・マシーンでシャーベット状にした、ソフトサーブというスタイルの飲み物で、なかなか見かけない珍しい一杯。
こちらは店内奥の2名がけ席で。天窓から入ってくる光が幻想的で、なんだか水槽のなかにいる気分。
見た目はコーヒーフロートのようだけど、なんとアルコール度数は11%。甘そうな見た目に反して味はしっかり。
スムージー状になっているソフトサーブはそのまま食べても、ビールと一緒に食べても口当たりがよくまた違った味わいをたのしめるんだ。
伝統的な建物とブランドの世界観が見事に溶け合った姿を目撃しに、ぜひふらっと立ち寄ってみてほしい。
※取材時は国内マイクロブルワリーのハーフタップ・テイクオーバーイベントでした。そのためゲストビールの用意がありましたが、通常はOmnipolloのフラッグシップ・バーとして、Omnipolloのビールを11種類提供しています。
1人旅の帰り道。日本橋兜町エリアの盛り上がりを見て
僕が今注目している日本橋兜町というエリア。みんなの目にはどう映ったかな?
かつて日本の金融街として発展してきたこのエリアは、1999年に東京証券取引所の立会所が廃止されて以降、その賑わいは影を潜めてきた。
そこに今回紹介した『Neki』『SR』『Omnipollos Tokyo』といったお店ができたことで、自然と感度の高い人々が集まるようになったんだ。
街にうねりが生じたことで、フレッシュでエッジが立ったショップが芽吹く土壌が育ちつつある。
土地の歴史に学びながら、今あるものを活かす。リノベーションの地を行きながら、軽やかに自分たちのセンスを溶け合わせるこの街の動きに目が離せない。
このエリアへの旅は、できることならぜひ1人で。街の盛り上がりに関わる人々と話せば、きっと多くの刺激を受けることができると思う。
1人旅の魅力は、日常では気づかないことに気づけたり、お店の人と自然と仲良くなれたり、なんだかいつもより積極的な自分になれることだと思うから。
街が変わっていく様子を、その目で目の当たりにしてほしいな。
さあ、次の旅はどこに向かい、誰が案内してくれるんだろう。今から楽しみにしていてね!
※撮影時のみマスクを外しています。また、アルコール消毒、三密の回避、検温等、新型コロナウイルス感染症対策を徹底したうえで取材を実施しています。
僕らの友達について
■福田琉弥(フクダ リュウビ)
Instagram:@fukuda_ryubi |
今回訪れた場所はこちら
■Neki(ネキ)
渋谷の人気店、『ビストロロジウラ』のシェフを務めていた西恭平さんが手掛ける、創作フレンチ。オープンキッチンでライブ感のある食体験をたのしみながら、西さんセレクトのBGMにも耳を傾けて。 Instagram:@neki_tokyo ※営業時間や定休日などは上記Instagramの参照をお願いします。 |
■SR(ストックホルム ロースト)
スウェーデンのストックホルム郊外でスタートしたマイクロロースター『Stockholm Roast』。店内に設置された焙煎機で挽かれたオリジナルのローストコーヒーをいただける。 Instagram:@stockholmroastjp 公式サイト:stockholmroast.jp ※営業時間や定休日などは上記Instagramや公式サイトの参照をお願いします。 |
■Omnipollos Tokyo(オムニポヨス トウキョウ)
世界のビールファンを魅了するスウェーデン・ストックホルム発のクラフトビールブランド<Omnipollo>(オムニポヨ)の、アジア初進出となるビールスタンド。 Instagram:@omnipollostokyo ※営業時間や定休日などは上記Instagramの参照をお願いします。 |
記事の創り手について
■イマイ キミアキ – 取材・執筆
日常のちょっとした瞬間から特別なシーンまで、“答え” ではなく “問い” を持ち、みなさんと共に考える余白を意識してお伝えしていきます。 Instagram:@diamond19_k |
■シミズ シュン – 撮影・編集
チトセの代表と編集長、カメラマンを務めています。”僕らが楽しく生きるために” をテーマに、親しい友人から話を聞いているような、そんな等身大のメディアを目指して。「楽しいから楽しむのではない。楽しむから、楽しいのだ。」という言葉を大切にして、日々を生きています。 Instagram:@shun_booooy |
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