謎多きユタナンと、彼が”Sillage”を通して伝えたい想い

シティーボーイを紐解くことで、僕らが楽しく生きるためのヒントを探る1月号の特集「シティーボーイの頭の中。」。

みんなは彼のことを知っているだろうか。パリで生まれ育ち、現在は日本を拠点として、自身のブランド『Sillage』(シアージ)のブランドディレクターをしている弱冠23歳の青年、Nicolas “Yuthanan” Chalmeau(ニコラ ユタナン シャルモ)、愛称”ニコ”のことを。

その身長と体格を活かして、多種多様なアイテムを見事に組み合わせてくる彼のコーディネートはInstagramでも支持され、現在は約3.2万人のフォロワーを誇っている。

だから僕たちはニコのことをもっと知りたいと思った。でも、Instagram上だけだと、彼が何をアウトプットしたのか、今どんなモノゴトに注目しているのか、そんな表面上のことしか分からない。

ニコがどんな人生を歩んできたのか、どんな考え方の持ち主なのか。しっかりと聞いてみたうえで、これから先彼が表現したい世界を覗いてみよう。

インタビュアーは、服が大好きな僕らの友達、ユウキ。

ーーニコ、今日はよろしく。まずは経歴から教えてくれる?

もともと僕はフランス、パリの11区で生まれた。ここはとってもクールな場所で、まじめに学校へ通わないような子ども(僕も含めてね(笑)。)が多くてね。

とても寛容で、自由な街だった。そして、このエリア出身の多くの人が成功している印象があるね。インターネットやSNSを通して、オリジナルのものを作り出す”カルチャー”を生み出す人が多いかな。

ーー自由なカルチャーの元で生まれ育ったんだね。そんな場所にいると、友達や近所のおじさん、おばさんにも、個性的な人は多かったんじゃない?

そうだね。みんなオリジナルな人たちだった。ファッションも個性が光っていて、だから僕自身も10歳頃から服に興味を持ったんだ。

小さいときはお金がなかったから、高い服は買えなかった。けれど、安い服のなかでも色のマッチングを楽しむ服の合わせ方をしていたかな。

”服で遊ぶこと”は小さい頃から意識していて、みんなと一緒はつまらないと当時から思っていたから、周囲とは違う人でいたかった。

ーー学生のときはアパレル関係の学校に行っていたの?

そう。パリのファッションスクールに通っていたよ。そして、スニーカーショップで働いて、ラグジュアリーウェアショップでも働いた。

『eyevan』(アイヴァン)や『PORTER』のセールスとして、フランスをはじめとしてヨーロッパ地域を担当もしたよ。

ーーそうそうたるショップ、ブランドだね!

パリでの友達に紹介してもらったんだ。15歳で学校をやめて、16歳から仕事を始めて(昼間はショップで働いて、夜はファッションスクールに通っていた。)、経歴が長かったことも関係があるかもな。

2年間デザインの勉強をした後、スニーカーショップやセレクトショップで働いた。その後、日本にきて1LDKで働くようになったんだ。1LDKでの仕事内容は、カメラマンやスタイリング、ブランドのインスタグラムをマネージすることだった。

ーー物心がついた頃から周りを服に囲まれていたんだね。そうだ、その日のコーディネートを決めるとき、大事にしていることはある?

服を選ぶときは、前日からあれこれ考えるのではなくて、当日に着たいと思う服を着てる。あとは、最初に選ぶときはジャケットから選ぶことが多いんだけど、シューズショップで働いていた経験から話せば、シューズが服選びの一番のキーポイントだと思う。

そして、靴とジャケットを合わせてから、中身(インナーなど)を選ぶ。僕の場合、クローゼットの中は自分の好きなものしかないから、どれを選んでも大抵は合うんだ。

ーーユタナンの服装って、バリエーションがあるけど、どのコーディネートも全体の統一感があるよね。今まで、系統自体は変化してきたりしたのかな?

もちろん。いつもスタイリングというものは変わり続けている。たとえば、今年はこういうスタイリングでいこう、来年はアダルトにカッコいいスタイリングでいこうと考えていたりはするけれど、常に「ストリート」の部分は残していたりね。

僕のなかでストリートの要素は切っても切り離せない。バックボーンと通じているかもしれない。

ーー一見大きく違うと見えても、その根っこにはストリート的要素があるのか。興味深い…。とはいえ、毎月どれくらい服を買っているのかが気になるな(笑)。

収入によってだよ。月に1万円しか使わないときもあるしね。みんなは意外に思うかもしれないけど。最近は自分のブランドをやっているから、欲しい服があれば自分で作れるというのも大きいね。それがブランドのコンセプトでもあるし。

ーーいつからInstagramを始めたのかな?

2012年。最初は友人、家族だけの100人ほどのプライベートアカウントだったけど、そこから自分のウェブサイト(ファッションブログ)を始めたことで、フォロワーが徐々に増えていった。

ーーニコのInstagramアカウントは、非常にクリエイティブで洗練されたギャラリーだと思う。運用していくうえでこだわりはなにかあるの?

ありがとう。実はテストアカウントを持っているんだけど、ギャラリーの見え方にはこだわっていて、自分の”世界観”を考えてポストしている。Instagramは僕にとって、ただ自分のことを発信するためだけのものではないんだ。

ブランド製品もフォトグラファー作品もすべて、Instagram上で発信しているから、僕にとってこのSNSはビジネス。あとは、様々なブランドからDMがきて、彼らの広告塔になることもあるから、常に世界観のあるギャラリーは大事にしているよ。

ーービジュアルや世界観を重要視しているんだね。そんなニコから見て、Instagram上でカッコいいと思う人はいる?

クールだなと思う人はたくさんいるけど、特別1人というのはいないよ。強いて誰か挙げてみてということなら、ロンドンにいるオリバをおすすめする。

 

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なぜかというと、「Instagramを雑誌のように見せたい」というのが僕の気持ちにあるんだけど、彼は見事にそれを体現している。

スタイリングや風景写真だけではなく、そのとき彼が何を思っていたのかといった、意識・思考を発信することも、雑誌のように見せていくなら必要なことだと思う。

ーーキャプションを書いていないけど、なにか理由があるの?

正直な話、めんどくさいのが一番(笑)。ただ、自分がキャプションを書くというよりは、新しいブランド『#whatwewear』を考えていて、このハッシュタグによっていろんな人を繋げたい。

実際、このハッシュタグを使うフォロワーが日に日に多くなってきている。軍隊、というかチーム感が生まれるよね。

ーー愛してやまないブランドはある?

身長が188cmもあるから、大きいアイテムやオーバーサイズを取り扱っているところが好き。そうだね、『UNUSED』(アンユーズド)や『URU』(ウル)は好き。ウルのデザイナーは友達だから、いつかコラボレーションしてみたいなあとは思ってるよ。

『Nike』はずっと好き、200足は持っていて、全体のうち80%は東京の家にある。引っ越す予定の新居にはシューズ専用の棚を作る予定だよ(笑)。

ーーニコのバックグラウンドは一口に言えないと思うんだけど、ここでは日本とパリについて。この2つの国に、ファッションの違いってある?

そうだね、東京に初めて来たときは、東京の方がパリよりもおしゃれな人が多いと思っていた。ただ、パリはお店が多いわけではないけど、おしゃれをすることが日常化されていた。

反対に、東京にはショップはたくさんあるんだけど、おしゃれをすることが日常化されていない。おしゃれ=非日常という印象がある。

その分、パリの人は全体として普段からおしゃれには気を遣っているね。パリは雑誌を読まないし買わない。雑誌からの情報ではなく、インターネットからの情報を頼りにしている。

日本は限定品の販売があったときに、すぐに完売になる。そうするとすぐにみんな着るようになるなと感じた。同じようになるなと。

日本の人はおしゃれだけど、みんな一緒のコーディネート。みんな誰かのマネをして、意識的なのかどうかは分からないけど、とにかく同じスタイル。

パリの人たちは、服が良いものでなくても、どんどんトライしてみんなと違う格好をする人が多い。流行というものよりも、自分の好きなもので服を着る」というのが意識の根っこにある。

ーーそんなニコは、流行を意識しているの?

“流行”ってなんなのさ(笑)? それはみんなが着ている『COMOLI』(コモリ)のタイロッケンコートや、『Paraboot』(パラブーツ)を履くといったもの? そういうのはあまりよろしくない。

自分自身が本当に好きでそのスタイルをするのは良いけど、誰かをマネしてカッコいいと思って着るのは、それこそカッコよくないよ。

新しくなったり、みんなと違うことをするのは必ずしも悪いことではない。みんなにはもっとトライしてほしい。あくまで僕の意見だけど、トレンドなんてものはよくない。ビジネスとしては良いかもしれないけどね。

僕のブランド、シアージを買ってくれる人は、自分がすでに持っているスタイルをアレンジして着てほしいと思っているし、Instagramを追っていると、現にそういう人が多い。

シアージを買ってくれる人たちは、誰かのマネをするんじゃなくて、オリジナルに着こなしてくれる人が多いから、やっぱりそれはとっても嬉しいことだよね。

その他にも人気で大きいブランドがあるのに、僕らを選んでくれることにありがとうと思う。

ーー流行の部分と対比して、シアージの言葉がでてきた。今このタイミングでシアージをもっと知りたい。まず、年齢だけでいえばまだ業界のなかでは若いと思うんだけど、今どんな想いを持っているのかな?

僕は、シアージを含め、これから僕が行っていくことで、現状のファッション産業を変えたいと思っている。このことに関して、僕は23歳だけど、必ずできると思っている。世界を変えられると思っている。

これからの世の中を動かすのは僕たちだから、ひと回りもふた回りも年齢が上の人たちをリスペクトしつつも、若い僕らがもっともっと動いていかないといけない。

おじさんも若い世代も、お互いにリスペクトしあうマインドが必要だと思う。「こうあるべきだ!」と指摘されて、自分を失うことは本当に良くない。

ーーうちに秘めたる熱い想いがあるんだね。それではブランドのことを聞くけど、シアージの名前の由来はなに?

“Sillage”はフランス語で「残り香、香りの変遷」といったような意味。「匂いで前にあったことを思い出す」こと。

ーー素敵な由来だね。ブランドを創っていくうえで、サポートしてくれている人たちとはどのように知り合ったの?

昨年の『THE NORTH FACE』のパーティーで知りあった。ファッション業界ではかなり有名な方で、経験豊富な方。僕はデザイン案をだし、彼がそれを作る。

彼に、「2万人ものフォロワーがいるなら、ブランドを立ち上げてみたら?」とアドバイスをもらったのがきっかけでこのブランドは始まったんだ。

すぐにデザインを描いて見せたら、岡山の工場に発注をかけてくれて、1ヶ月後にはサンプルができた。

ーー他にサポートしてくれてくれている人はいる?

アーティストの依田さん。彼は良い友達でもあり、素晴らしいアーティストで、よく一緒に仕事をしている。

彼とは「1LDK」でともに働いていたときからの仲。ちなみにサポートしてくれる奥さんとは、中目黒のパーティで知り合ったんだ(笑)。

 

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ーー実際の服を作るにあたって、生地の選定には関わっているのかな?

うん。デザインして、いろんな場所に行って生地の買いつけを行っている。たとえばタイだったり、日本だと高円寺だったり、上野だったり。

そこで買いつけたものを工場にもっていき、そこでもディテールなどにこだわって、プロダクトを作っている。

ーー実際作りたいと思っても1つ1つ作れる人が知り合いにいないと厳しいと思うんだ。そうしたコネクションはどこで生まれているのかな?

半分Instagram、半分パリや日本の友人、日本で働いていたときのコネクション。ファッション業界はとっても狭いから、人と人をつなげていくと、どんどんコネクションが広がっていくんだ。

ーーなるほどね。今後の活動は東京、日本をベースに?

そう、だから日本語を勉強しなきゃいけない(笑)。みんなに教えてほしいな。

ーー日本語は奥さんに教えてもらいな(笑)。活動はパリの方が動きやすく思えるけど、なぜ日本だったの?

パリは僕にとっては退屈だったし、タイはジャケットが絶対いらないと断言できるほど暑い。東京はおしゃれな人が多いし、個性的なショップがたくさんある。

2015年に初めて東京にきて、そこで絶対日本で暮らすと決めて、2年後、実際に日本に住み始めた。

みんなは僕に、「ニコラ、ファッションの仕事をするのになんでパリじゃなくて東京なんだ?」と聞くけど、みんなわかってないんだよ!

東京はファッショナブルというよりかは、「カーニバル」。パリのファッションはスタイリッシュだけど、味が薄い。

東京はいろんなファッションを楽しむ人が多くて、もっとワクワクするね。

ーーたしかに、日本には四季があるしね。カーニバルという言葉で日本を表現するのは面白いなあ。最後に、Sillageの服を通して伝えたいメッセージを教えてほしい。

大きく2つある。1つ目は、大きい服を作ることで、性別、体型関係なくサイズにとらわれず、自由に服を着て、楽しんでもらいたい。実際に購入してくれている人の15%が女性なので、その想いが服を通して伝わっていると感じている。

2つ目は、みんなと違う、オリジナルでいてほしいという想い。大きい服を作っているけど、ポップアップを開いたらまだまだ幼い子供が来てくれることもあってさ。

そうやって年齢関係なくいろんな個性を持った人が来てくれるから、みんなそれぞれ自分が持っているエッセンスを加えて、シアージの服をオリジナリティあふれた着こなしをしてほしい。

ーー今後、様々なアイテムをリリースしていく予定なのかな?

うん! 数多くのブランドとコラボして、たくさんのアイテムをリリースする予定だから楽しみにしていて!

具体的な名前はまだ言えないけど、ファッション好きなら誰もが知っているブランドから、まだ知名度はそこまでないけど、質の高いものを作り続けているブランドに至るまで、お互いの魅力をコラボさせたスペシャルなモノだよ。

ーーニコの感性と、著名なブランドのコラボか…。どんなアイテムが生み出されるのか、心待ちにしておこうかな。

ニコはまだ弱冠23歳。チトセを読んでくれている読者の多くの人とは同世代だ。僕たちと横並びの年齢にも関わらず、ファッションという分野で、これほどまでに自分の感性を活かし活躍している人がいることを見つけ、素直に驚き、感動した。

彼が10年後に業界内でどんな存在として活躍しているのか、ワクワクがとまらない。今までのブランドとは一線を画す独自の感性が、今後何をアウトプットしていくのか、その1つ1つの動きに注目していきたい。

そんな彼の好きな言葉は、”つけめん”。あれ、好きな言葉って著名人の遺した言葉とか、そんな感じだよね…。

僕らが呆気にとられているのはおかまいなしに、「AFURIのつけ麺が最高なんだよ!」と力説するニコの無邪気な目に、あー、やっぱり23歳だなあ…と思ったのだった。

今日はありがとう、ニコ!

2019-01-10|タグ: ,
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