横浜美術館にいる男性2人組

横浜美術館にて。『Meet the Collection —アートと人と、美術館』

シティーボーイといえば芸術を好んでいる(と僕は勝手に思っている)けれど、そういった芸術を楽しむ場所って、なんだか格式高いイメージがある。

行くのにためらっちゃうよなぁ、なんてつぶやいちゃったり。そんな僕に「今度の休みに美術館へ行こうよ」と声をかけてくれたのが先輩のさかもっちだ。

彼は休みの日になれば美術館やギャラリーへ足を運び、芸術を楽しむ生粋のシティーボーイ。

そんな彼に声をかけてもらったんだから、尻込みしているなんてもったいない。そのお誘いにはすぐ「YES!」と返事をしたんだ。

そして当日。今回訪れる「横浜美術館」に到着した僕は、ネットで見ていたよりも大きな建物にびっくり。

けんてぃ
いざ目の前にすると緊張するな…。よし、入ろうか。

横浜美術館、館内

さかもっち
けんてぃ、こっちだよ。

普段、スーツ姿しか見ることができていないが、私服もビシッと決まっている。

さかもっち
やっぱりここは、何回来ても新鮮な感じがするんだよね。前に来たときはワークショップに参加したんだ。

ここへ来る前にさかもっちが、「横浜美術館は展示だけでなく、教育普及やワークショップもやってるから、どのタイミングで行っても新鮮なんだ。」なんて話してくれてたな。

けんてぃ
そういえば、今回の展示ではどんなものが見られるんですか?
さかもっち
横浜美術館は今年30周年の節目に「Meet the Collection ─アートと人と、美術館 」を開催していて、400点を超える絵画、彫刻、版画、写真、映像、工芸などが展示されているんだ。さらにゲスト・アーティストの作品も展示されていて、力が入った展示となってるんだよ。
けんてぃ
400点も! それにゲスト・アーティストの作品も見られるなんて、まさに30周年にふさわしい展示ですね。
さかもっち
横浜美術館にあるコレクションとゲスト・アーティストの作品のコラボだから、何回も来ている僕も、普段と違う見方で作品を見られるからワクワクしてる。さぁ、さっそく入ろうか。

けんてぃ
何が待っているんだろう! 楽しみだな!

Meet the Collection —アートと人と、美術館

さかもっち
今回の展示は2部構成の7つの章に分かれていて、それぞれにコンセプトとこだわりがたくさん詰まっているんだ。

第Ⅰ部 LIFE:生命のいとなみ

躍動する線であらわされる、命の鼓動、身振りや表情の描写に込められた、人の感情。「生命」や「人のいとなみ」が、美術においてどのように表現されてきたかを、4つのテーマから考える。

Ⅰ–① こころをうつす

日本の美術において古くから題材にされてきた、歌舞伎や浄瑠璃などの演劇や古典文学といった物語の主題は、近代に誕生した日本画、そして今日の美術に至るまで脈々と受け継がれている。

ここでは、幕末の錦絵や、近代の日本画に描かれた演劇や古典文学の登場人物たちの「情念」を主題とした絵画を展示している。

けんてぃ
広いなー! 和の作品が多くありますね。
さかもっち
この作品たちの多くは明治期に描かれたものなんだ。

明治期雑誌挿絵より 鏑木 清方、他 明治期 多色木版

けんてぃ
そしたら100年以上前の作品なんですね! 貴重な絵ですね。

Ⅰ–② いのちの木

植物や動物などの生きものをモチーフとした絵画や彫刻はときに、それ自体がまるで命を宿したかのように生き生きと動き出し、拡がっていくような感覚を観るものに与える。

さかもっち
この部屋はなんと、部屋全部が作品だそう。
けんてぃ
作品というより、まるで1つの生き物みたいですね。

さかもっち
淺井さんは、横浜美術館に所蔵されている作品の中から、「自然」や「生命」をテーマとした作品群をイメージの起点として、この空間を作ったそうだよ。他の芸術家の作品との調和がすばらしいよね。
けんてぃ
淺井さんの描画がやさしく全体を包んでいるって感じですかね。あっ! 見てください、こんなところに動物がいますよ。神秘的な森の中にいるようですね。

Ⅰ–③ まなざしの交差

「まなざしの交差」の場は、絵画のモデルが投げかける視線、逸らす視線など、「目」でいっぱいの展示空間。

それをカンヴァスや写真に写し取る芸術家の眼もある。そのやりとりの結果として生み出された作品が僕たち鑑賞者の眼で捉える。

いくつもの視線のやり取りをしてきた作品たちの「まなざし」の意味を考える。

けんてぃ
なんだろう…視線を感じるような…。やっぱり見られていますよ!
さかもっち
雑誌の表紙を顔に当てはめているけど、とても強い視線を感じるね。

けんてぃ
なんだ一体何を訴えているのだろうか…。

Ⅰ–④ あのとき、ここで

写真が普及した19世紀後半以降、天災や戦争、政治の変革といった歴史的な出来事は、報道写真を通して瞬時に世界中へ伝えられ、人々の中に共通の記憶を形づくってきた。
美術家たちは一方で、そういった災禍のなかを生きる市井の人々や、時間の経過とともに忘れられていく記憶を、象徴的なイメージを通して見る人たちに伝える。
さかもっち
横浜美術館は写真の展示も多くある。写真に収めることで、忘れられていく記憶を誰が見ても思い出せる。写真の良さだね。

けんてぃ
これからも残していきたいですね。この写真のこの時間、僕はどこで何をしていたかな。

第Ⅱ部 WORLD:世界のかたち

さまざまな素材やイメージを構築して紡ぎだされる美術作品は、芸術家それぞれの世界観の表徴であり、世界の構造についてのひとつの解釈でもある。

象徴化された「世界の縮図」としてのアートのありようが3つの視点で紹介される。

Ⅱ–① イメージをつなぐ

けんてぃ
形が特徴的な作品と絵画がたくさんありますね。その奥に大きな絵がある。

さかもっち
この空間は「繋ぎあわせ」を意識した場所になっていて、奥にある大きな作品から、横浜美術館のコレクションの中核をなすシュルレアリスム絵画や彫刻が飛び出すイメージをほどこしたものなんだ。
けんてぃ
他の芸術家の作品と繋ぎあわせてるって意味なのか! よく見てみると1920年代のものから1980年代のものがありますね。時代が違うと描き方に違いや特徴が出ると思いますが、大きなあの絵からそのまま飛びだしてきたと言われても違和感ないなぁ。

学芸員さん
さまざまなモチーフを繋ぎあわせて、ひとつのヴィジョンを形づくる今津さんの作品は、100年前のシュルレアリスムの芸術家の創作にも相通じるところがあります。今津さんの大きな絵画と横浜美術館のシュルレアリスム作品群が共存した印象的な空間になっています。

Ⅱ–② モノからはじめる

1960年代末に「もの派」の作家として出発し、今日も第一線で活動する菅木志雄さんの《環空立》は1999年に横浜美術館にて開催された個展の際に発表された。今回20年ぶりに同じ場所に展示される。

菅さんの近年の作品も出品されており、横浜美術館のコレクションからピックアップされたものを同じ部屋に展示することで、素材同士の出会いの空間を創っている。

けんてぃ
次の場所は…入り口はここであってます?
さかもっち
けんてぃ見落としてるよ! この造形そのものが作品なんだ。

けんてぃ
気づかなかった…! 部屋の中だけじゃないんですね。

さかもっち
「部屋の中に作品がある」から作品を見る。というよりは造形作品の「素材」を意識して見てみようか。

けんてぃ
これはどんな素材でできていて、何をあらわしているんだろう。

Ⅱ–③ ひろがる世界

王様の美術館 ルネ・マグリット 1966 油彩、カンヴァス、横浜美術館蔵

要素を削ぎ落とし、極限まで単純化されたイメージ。あるいはフレームの外まで無限に広がっていくようなイメージ。それぞれの作品に、それぞれの芸術家の「世界のとらえ方」が示されている。

さかもっち
Meet the Collectionの締めくくりの場所がここ。
けんてぃ
今までの場所とまた違った雰囲気がしますが…ここはどんなコンセプトの場所なんですか?

 

さかもっち
ここでは展示の締めくくりとして、芸術家たちが独自の視点と解釈をつうじて象徴的に表したそれぞれの「世界のすがた」を展示しているんだ。

けんてぃ
なんとなく感じるのは、「その瞬間」を捉えている作品というよりは「もっともっと先」を想起できる作品が多い気がします。

カフェで一息

横浜美術館の展示にずっと興奮していたため気付かなかったが、脚が疲れていた。

(少し座ろうかな)と思っていたら、「さて、館内は一通り見たし休憩しようか」と、声をかけてくれた。

Café 小倉山

横浜美術館に併設される「Café 小倉山」で一休みすることに。「ここへ来たら必ずこれを頼むよ。」とさかもっちが言うものを頼んでみた。

スモークサーモンサンドとキャラメルラテ

大正解。焼き目が軽くついたトーストに、サーモンがなんとも絶妙。

これに優しい甘さのキャラメルラテが一緒にあるんだから言うことなしの100点。どんどん口に吸い込まれて行く。なんておいしいんだろう…!

多幸感に包まれつつ最後の一切れを口に入れようとしたとき、さかもっちが声をかけてきた。

さかもっち
横浜美術館はどうだった?
けんてぃ
いやぁ、本当によかったです。いろんなことを、作品を通して感じとれたなと思っています。ただ、前知識がなかったのが本当に悔やまれるなぁって思っちゃいました。もっと知っておくべきだったなぁ。
さかもっち
そっかそっか。見方は決まっているものではないから、純粋に感じたものを楽しむのも大事だよ。
けんてぃ
え?  芸術家の考えをそのまま汲みとるってことが大事なのでは?
さかもっち
そんなことはないんだ。実は学芸員さんに「芸術に初めて触れる後輩に、芸術の前知識は必要ですか」って聞いてみたんだけど。そしたらね、こう答えてくれたんだ。
学芸員さん
実際は前知識が必要であったり、あった方が良い展覧会が多いです。ですが今回の展覧会に限っては、ほぼいりません。それぞれの作品との、あるいは展示空間との「出会い」を純粋に楽しんでほしいですし、今回の展覧会は一見、異質な作品が脈絡なく並べられているように見えたとしても、そこには何らかの「つながり」のキーワードが潜んでいたりします。時代やジャンルが異なる作品のなかに、意外なつながりを発見したりするのは楽しいものです。みなさんがどういうつながりを発見するか、それが私たち学芸員の意図と同じかどうかは、あまり問題ではありません。むしろ、違う見立てをしてくださったら嬉しいです。そういう「勝手な気づき」の経験を美術館で楽しんでいただければと願います。
けんてぃ
そうなのか。純粋に感じたものを楽しんでいいんだ。美術館を楽しめる入り口が拡がった気がするなぁ。聞いてくれてありがとうございます。

事前知識があればもっと楽しめる!

だけど、まずは美術館へ足を運んで、自分の感じたままに楽しむのが初心者の極意なのかもしれないと、僕は感じた。

芸術に触れてみて

けんてぃ
はじめての美術館にここを選んで良かったと思えるほど、大満足の一日でした。それも30周年という節目に来れたのが良かった。作品ひとつひとつに芸術家の想いがあって、その作品に対する見方やギミックが細かくほどこされていて、ずっと圧倒されてましたよ。
さかもっち
途中からけんてぃ、口が開けっ放しだったのはそういうことだったのか(笑)。じゃあ明日は他の美術館へ行ってみよう。また口が開けっ放しになるかもよ。
けんてぃ
それは楽しみです(笑)。明日はどこへ?
さかもっち
明日のお楽しみ!  地図だけ送るよ(笑)。

とだけ言われ、お預けを食らってしまった。

でも、明日の楽しみは明日に取っておいて、今日は横浜美術館の余韻に浸ろう…。

そしてまた横浜美術館へ来て、次回の展示もワークショップも楽しもうと思ったのだった。

展示紹介

■横浜美術館開館30周年記念 Meet the Collection —アートと人と、美術館

期間:6月23日(日)まで

時間:10:00〜18:00 ※毎週金曜・土曜は20:00まで、入館は閉館の30分前まで。

休館日:木曜日

場所:横浜美術館

住所:神奈川県横浜市西区みなとみらい3丁目4−1

料金:一般¥1,100、大学・高校生¥700、中学生¥500、小学生以下無料、65歳以上¥1,000(要証明書、美術館券売所でのみ対応)

※毎週土曜日は高校生以下無料(要生徒手帳、学生証)

※障がい者手帳をお持ちの方と介護の方(1名)無料

HP:横浜美術館

 

2019-06-17|タグ: ,
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