夏を楽しむために、見た目に涼しい自分だけの”風鈴”を。

暑い、暑い、暑い。

灼熱の太陽が降りそそぐ日本の8月。

外にいるだけで汗が出るこんな日は、自然とエアコンが効いた部屋にこもりがちになってしまう。

ぅー、涼しい。こうやって冷たいアイスを片手に、エアコンの効いた部屋でYouTubeを見るのが日本の夏だよね。うんうん。

…だけど、こんな夏の過ごし方で本当にいいの? 夏を楽しめてる?

今までの夏の記憶を思い出すと、そこには田舎の実家があって、スイカがあって、風鈴があった。

そういえば、風鈴の音って心地よくて、昼寝しながらいつまででも聴いていたっけか。

いつのまにか風鈴がない生活に慣れていたけど、やっぱり夏といったら風鈴だよな…。

江戸まるよし風鈴で、絵付け体験を。

急に風鈴を作りたくなった僕。JR御徒町駅から歩いて数分のところに位置する『篠原まるよし風鈴』にやってきた。

昔ながらの商店街が残る一角に、目立つ「江戸風鈴」の文字。今日はここで風鈴の絵付け体験をさせてもらう。

さっそく店の中に入ると、目に飛び込んでくるのは鮮やかに彩色された風鈴の数々。

壁一面に飾られていて、反射した光がキラキラと輝いている。よく見ると、花柄だけでなく色つきのものや、キャラクター柄のものも。

風鈴にこんなに違いがあるなんて、正直、今まで知らなかったな。

僕だけの、風鈴。

「お兄さん、絵付け体験は2階だよ」

風鈴の美しさに見惚れていた僕。お店の人の声にハッとした。そうだ、今日は風鈴の絵付けを体験させてもらうんだった。

うながされるままに店の2階へ上がり、テーブルに腰かける。目の前にはすでに紐を通された風鈴と、絵の具、そして水の入ったバケツが置かれている。

いよいよ、絵付け体験の始まり。

この絵付け体験のテーマは夏らしく「海」。

あまりの暑さでインドアになりがちな僕も、心だけは夏を楽しみたいと思い、このテーマにした。

使う色は水色と白色。目で見ても、耳で聴いても涼しくなるような、そんな風鈴を作るんだ。

風鈴の絵柄は内側に描くため、思ったように筆を使うのが難しい。

だから、筆につける絵の具や水の量を調整しないと風鈴の中で絵の具が垂れてしまい、見るに耐えない絵柄が出来あがってしまう。

僕は慎重に、筆に水と絵の具をつけ、描き始めた。だけどおかしいな、ぜんぜんきれいに描けないや。

さっきお店の入り口で見た色鮮やかな、きれいな絵柄がなかなか描けない。

さっきから、ちょっと描いては消し、またちょっと描いては消し…を繰り返している。

細かく修正して、1つひとつ自分の思うものに近づくように。

描いては消し、描いては消しを繰り返していくうちに、なんとかそれらしい絵柄が描けてきた。

僕が今描いているのは「花火」と「金魚」、そして「海」の柄だ。

花火には「悪いものを払う」という意味があり、金魚には「幸せを呼び込んでくれる魚」という意味がある。

ほら、なんだか縁起の良さそうな風鈴になってきた。

徐々に完成形に近づいていく。最初は花火、金魚、海の柄だけにしようとしていたけど、すすめられてトンボまで書いた。

そのおかげで、風鈴の絵柄に賑やかさが増した気がする。

そうしてついに完成した、僕だけの風鈴。

心なしか風鈴の音も心地よい。カランコロンと耳に優しい、まるで浜辺で花火を見ているような気持ちにしてくれる、気持ちの込もった風鈴が完成した。

職人さんに聞く、風鈴の魅力とは。

さっそく、絵付けした風鈴を篠原まるよし風鈴の店主、篠原 正義さんに見てもらうことに。

お話しするなかで、風鈴をとおしたものづくりの考え方を知ることができた。

作った人の想いが”音”に表れる

篠原さん
今日、この風鈴を作ってみてどうでしたか?

チトセ
正直思った以上に難しくて、実は相当手が込んでいるんだなと実感しました。海をテーマに風鈴を作ったので、浜辺にいるような、騒がしいんだけどなんだか落ち着く、そんな音の印象を受けました。

篠原さん
風鈴は宙吹き(ちゅうぶき)という製法で作られていて、1つひとつ手作りなんです。だから大きさも小さいものから大きいものまであって、1つとして同じものはない。それが風鈴の魅力なんです。

チトセ
1つひとつに想いが込められているからこそ、音色が違って聞こえるんですね。他の風鈴と僕が今日作った風鈴とでは、音色がまったく違って聞こえます。

篠原さん
職人の仕事ってみんなそうなんだけど、作った人の気っていうのは品物の中に入ってくるんですよ。風鈴の場合は特に、”音”が出るじゃないですか。その音って家中に広がるんですよね。だから、さきほど海を意識したと言っていましたが、あなたがそう思い作れば、それが音に表れるし、ものづくりはそうやって作り手の思いが込められるものなんです。

篠原さん
たとえば写真を撮るときも、この人の一番いい表情を写してあげようと思って写真を撮るじゃないですか。文章を書くときもどうやってこの想いを伝えようかと考えて書きますよね。ものづくりとは風鈴に限らず、全部同じ。自分がやったことがすべて反映されるということを伝えたいから、今、私たちはこういう体験をしていただいているんです。

絵柄にもそれぞれ意味が込められている。

篠原さん
もともと花火は戦の合図に使ってたんですよ。ドーン、ドーンって大きな音がでるでしょ。それから後に江戸の水路で水難事故が多発したことを機に「川開き」をするようになって、その川開きと一緒に花火をし始めたのが、両国の花火大会なんですよ。※両国の花火大会の起源については諸説あり

チトセ
知らなかったです…! 花火にはそういった意味が込められていたんですね。

篠原さん
それぞれの絵柄には意味が込められているからこそ、ちゃんと想いを込めて書かなきゃいけない。花火には悪いものを取り払う意味が込められているので、そういったイメージで書くことが大事なんです。

ものづくりはみんな同じ。好きならやり続ける。

篠原さん
若い人は特にそうなんだけど、上から言われることをやり続けていると文句も言われないし、これでいいやって思ってしまうけど、本当にやりたいことがあるなら思い切ってやってみるべきだと思うんですよ。ただね、自分がやりたいと思った仕事は我慢が必要です。

チトセ
我慢が必要…。

篠原さん
私もこの仕事を48年間やっているんだけどね、それこそ大学卒業して実は一度就職して、辞めてこの風鈴を始めたんです。この間、ずっとこの仕事は自分しかできないと思ってやってきたからこそ、ここまでやってこれたんだと思います。ものづくりはみんな同じ。好きならやり続けることが必要なんです。

お話の最後に少しだけ、ガラス吹き体験をさせていただいた。

風鈴はまず、500円玉くらいに小さくガラスを膨らませる。その上に溶けたガラスを巻きつけ、さらに息を吹き込んで、ガラスを膨らましていく。

この最初のガラスを500円玉にすることが難しい。何度やってもガラスが途中でしぼんでしまうか大きくなりすぎてしまう。

本当に風鈴1つひとつに職人さんの想いや技術が込められているんだな…。

僕は自分で作った風鈴を手にしながら、完成するまでにかかったそれぞれの工程を思い返し、奏でる音色に耳を澄ませた…。

日本の夏は、やっぱり風鈴。

家に帰りさっそく風鈴をつけてみた。夏の夕暮れの湿気を伴った風も、この風鈴を通せばなんだか心地よく感じる。

暑くて何もできない今年の夏も、この風鈴があれば夏気分を味わうことができる。

やっぱり、日本の夏は風鈴でなきゃ。

店舗詳細

■篠原まるよし風鈴

住所:東京都台東区台東4-25-10

電話:03-3832-0227

FAX:03-3832-0255

時間:ホームページを要確認

HP:篠原まるよし風鈴

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