シェアの良いとこってなんなのさ?

最近、”シェア”という言葉をいたるところで耳にする。

カーシェアリングをはじめとしてモノのシェアや、Instagramにお気に入りのカフェをあげるといった好きのシェア。そうしたモノ・コトのシェア熱の高まりを感じる。

そこで、1つ思ったことがあるんだ。このシェアという概念には、僕たちの人生をより充実させるなにかが詰まっているんじゃないかって。

ならば、“シェア”をさまざまな形で実践している人たちに話を聞けば、僕たちが人生を楽しく生きていくうえで大事ななにかを掴めるかもしれない。

ということで、今回は「シェア」って一体どういうものなんだ? なんてあいまいなところから話を広げていこうじゃないか。

まずはシェアの最たる例、他人と時間・空間をシェアする「シェアハウス」に住んでいる2組に、シェアの醍醐味を聞いてみることにしよう!

起業して1つの夢を追いかける! ”アルマハウス”

1組目にお話を聞くのは、「Cocoda!」というデザイナー向けの学習サービスを提供しているスタートアップ「株式会社alma」のみんな。

学生起業をして、「自分たちが持っているすべての時間をスタートアップに捧げよう!」、そんな気持ちで始めたのがこの”アルマハウス”なんだって。

—もともとはどういう始まりだったのかな?

東京と神戸のメンバーでCocoda!のサービス開発をしていて、神戸のメンバーが東京に引っ越してきたときにこっちで住むところがなかなかなく、それじゃあみんなで住むかと。

自然な流れでシェアハウスをすることになったかな。シェアハウスって家賃を安く抑えられるとか、光熱費が安いとか、その点は大きい。

ただそれよりも、夜の時間帯も含めて一緒の時間を過ごしたいと思って。

—「いまあるすべてをスタートアップに捧げよう、それにシェアハウスの方が安いし。」って感じ?

そう。あとは単純にコミュニケーションが取りやすいこともある。いつでも近くにいるから、何においても一緒にできるという点が大きいかも。

僕らみたいなスタートアップだと、立ち上がりの速さはシェアハウスをしていたことによって大きく変わったと言えるよね。

5月にサービスの開発を始めて9月にリリースの計画だったんだけど、8月は毎日が開発合宿という感じで。それこそカオス。

でもそれができるのも、1日中一緒に過ごせる場所があったからできたことで。

—そうだよね。コワーキングスペースも24時間空いてるところってなかなかないし、カフェで作業と言っても人数も他人の目のことを考えても、ちょっと厳しそう。

プライベートな空間でありつつも、みんなで作業ができる空間であることもシェアハウスならではの魅力だと思う。

なんか、全部が全部オープンなんだよね。それぞれの恋愛もわかるし(笑)。

—恋愛もつつぬけなのはなんとも言えないな(笑)。シェアハウスに住む前からあったとは思うけど、いざ実際に住んでみて、一体感を感じた瞬間はどんなときだった?

もともとサービスを始める前も打ち解けてはいた状態だったけど、シェアハウスを始めてから、家にメンバーの家族が来て一緒にご飯を食べたり、メンバーの彼女が来て一緒にゲームをしたり。

それぞれの大切な人にも会えるようになって、メンバーのためにという気持ちの他に、その周囲にいる大切な方のために、という気持ちも芽生えたかな。

—お互いだけなく、その周りにいる人たちのことも意識できるようになる。それは良い発見だね。

話を聞くだけじゃなくて、実際に会って話すことができる。大切な人の大切な人に会うと、その人の人となりもさらにわかって、より理解が深まる。

メンバーのなかにスパイスカレーにハマっているやつがいるんだけど、彼がメンバーの家族に振舞ったりもしていて、カレーの達人と呼ばれていて。

誰かが来たらカレーを作って食べる。そんなうちの名物料理もできたり(笑)。

—様々なメリットがあって今住んでいると思うんだけど、シェアハウスをする人、興味を持っている人に対してなにかシェアハウスならではの面白いところを教えて!

シェアハウスをする前は、夜中に急に思い立って友達とラーメンを食べに行くなんてことはできなかったけど、今は一緒に住んでるからふと街に出れるし、孤独に感じることが本当にない。

どっか行きたいときに誰か誘ってすぐに行けるし、帰ってきたら人がいるし…さみしくない(笑)!

—なんだか寂しがりやのように聞こえるね(笑)。

学生だったら時間があるしわりと会えるかもしれないけど、社会人になるとおたがい時間もなくなるし、なかなか会えなくなる。

そのなかで会いたいときに会える人がいるのは、実際本当に大きいことだと思うよ。

—1つ疑問に思ったのが、オフィスだとデザイナーとエンジニアって基本的に執務スペースを分けられていて、コミュニケーションをとることってなかなかないと思う。シェアハウスだと違う立場の人と隣のデスクでコミュニケーションを取ると思うんだけど、違ったものの見方をする人がいることで、思い浮かばないような発想が生まれたりすることってある?

あると思う。休憩がてらに覗きにいったりして、おたがいが今どんなことをしているのかはすぐにわかる状況なんだよね。

すべての会話が聞こえるから、たとえばエンジニアが普段こういうことを考えて作業しているんだなっていう勘所がわかってきたり。

じゃあ、デザイン案を出すときもそこの要素を気にしながら案を提案したりだとか。

—おたがいの仕事に対する尊敬もそこから生まれたりするんだろうな。違った職の人が何をしているのかがわかるって、リスペクトにも繋がるよね。シェアハウスの大きなメリットだ。

それは大いにあると思う。そもそもコミュニケーションを取りたいときにすぐ取れるから、不透明感をまったく感じない。おたがいの行動を把握しきっていると、変に疑うこともないし。

みんな仕事が大好きで、自分を追い込む人間が多くて(笑)。朝方まで仕事をしがちな共通点もあるね。朝まで頑張っている姿が自分の目で見れるから、自分も頑張ろうってすごくモチベーションも生まれる。

—たしかに。電話で作業をすると、その場その場の空間が違うのでモチベーションの差が出そう。空間を共有することによって、空気感からモチベーションまでもシェアすることが可能になるんだ。

そう。特にリリース間近の時期はそれがなかったら乗り越えられてないと思う。1人だったら絶対にできないし、寝落ちはマスト(笑)。

シェアハウスはおたがいを見せ合ってるし、おたがいが同じ目的を持っているからそれができている。

生活のためにシェアハウスに住むより、同じ目的を持った人たちが集まって過ごす方が何を頑張っているかがわかるし、なによりも刺激になるし、使い方としては向いていると思うな!

—自分のやりたいことのために他も頑張っている状況。どんなタイミングでも、嫌だなって思うことがなさそうだよね。

朝型の人がいて、夜型の人と7時にバトンタッチしたりしてね。夜にうるさいなーって思うこともあるけど、彼がやっていることがサービスにつながっていると思えるし。

相手の陰の頑張りもときおり見えてくるし、モチベーションの維持につながる。もはや陰ですらなくて、頑張ってないんじゃないかと疑問にすらない。その考えが不毛に感じる。

ある程度の関わりではなく、疑いを越えていった関係になっているからこそ、シェアハウスという形がより活きているかな。

—起業に限らず、おたがいが同じ目的を持っているならこの形は理想的に思える。嫌だなって思うことももうないのかな?

強いて言えば、家がたまに汚くなることくらい(笑)。生活するうえで洗濯などの家事は特に分担してなくて、さすがにやらなきゃなと思ったときに各自が動いてる感じ。それでストレスも特に感じてないし。

—個人のためのスペースがないから喧嘩がないのかな?

自分のスペースがあって汚されたら嫌だけど、共有のスペースだから保たなければいけないといった美意識はみんなあると思う。シェアしているからこその感情かな。

それに、お互いが限界まで頑張っている認識がある。試験前の勉強みたいな。汚くなることってあるじゃん(笑)? それに似た配慮のようなものはある。

—「親しき仲にも礼儀あり」だね。たがいがたがいにリスペクトし合っている。

うん。根底に尊敬があることが大きいと思う。人間的に嫌な人がいないことは救いだよね。自分だけのプライベートな空間を持っているとそこを守りたい意識になるんだろうけど、すべてを共有していると自分を守るといった感情もなく、おたがいの優しさにつながっていると思う。

—1人暮らしをしているときはそういう感情があったの?

「家に帰りたい」ってね。1人暮らしをすると逆に綺麗さを保てないなんてこともあるよね。メンバーの1人がそれで、家のお皿にカビを生やしたらしくて(笑)。

—シェアを大きな形で実践しているからこそ聞きたいんだけど、シェアハウスのみならず、人とモノやコトをシェアする、分かち合う醍醐味を最後に聞きたい。

時間をシェアしていけばいくほどみんなのことを知っていくことにはなるので、信頼はかなり増す。

チームとか、会社とか、同じ目標を持っている人がいたら、シェアハウスをするとさらに関係が良くなるかも。心を預けられるメンバーとして良い。

あとは、分かち合っているようで、自分のものを減らして与えているようで、実はそれ以上のものをもらってる! これはシェアの醍醐味。

—自分が他人になにかを与えている意識よりも、それをしたことによって他人により大きなものを与えられているという認識があるのかな?

うん。空間しかり、食べ物しかり、自分だけで暮らしているときより減ってしまうものはたしかにあるんだけど、友達との時間ってお金で買えないし、いろんな情報をもらえたり、自分のお金じゃ買えないようなものが手に入ったり、意外と減らしているようで豊かになっているんだよね。

人になにかを与えることが引き算じゃないってことかな。同じ時間を過ごしていると、刺激を受ける量は格段に増える。

—“なにかを与えることが引き算じゃない”。この言葉、すごく大きな意味を持っているね。

自分だけだったら知る由もなかったことが知れたりするよね。自分の脳が4つになっているような。

スケボーとかサウナとか、メンバーがはまってなかったら絶対にやらなかったしね。きっかけと刺激にあふれている。

—自分の可能性が大きく広がる感覚だ。

うん。あとは、第2の家族のような気持ちになる。地方出身で大学から東京のメンバーもいて。1人暮らしだったら東京の生活関係ってすごい無機質なものになる怖さがあって。

でもそのなかで帰る場所がある。それがシェアハウス。ひたむきに頑張るだけでは自分が空っぽになっていくだけの恐怖感があったんだけど、帰る場所があることの安心感。

その存在が心の支えになってる。外に外に自分のフィールドを拡げていくなかで、心の拠り所があるからこそ安心してオールを漕いでいける感覚。

—なにかがあっても、ここに帰ればすべてが満たされていくような。そんな場所を家族以外で持てるのって尊いことだし、あたりまえじゃないよね。SNSの時代、手触り感のある人間関係があることは大事だね。

あとはやっぱり青春してる! って思えるかな。同じ目的に向かって時間を共に過ごすのって、高校のときの部活と通ずるものがある。

常に一緒にいて同じことに取り組んでいるし、加えて今は社会的に価値を提供できている実感もあって、青春+社会的意義を感じる。恵まれていると感じるな。

ひたすらプロダクトを作って、二郎を食べて(笑)、またサービス設計して、ある程度落ち着いたら焼肉食べてね…。僕らはまだまだ若いけど、社会人として大人なりの青春をひしひしと感じているな。

スタートアップにいると心が折れやすいよねっていうのはあるあるで。仕事多い、難しいみたいな。そのタイミングで一緒に居られるのはシェアハウスの醍醐味だし、きっと大丈夫って安心感を与えてくれる。

—おたがいがその苦労を知ってるわけだしね。理解してもらえているって大きいな。

息抜きするときも、スマブラしよーってなるしね(笑)。基本的にみんなポジティブなので、ドヨーンとした空気にはならないかな。4分の1が落ち込んでいても、4分の3が励ませるわけだし。

1人で居たら帰っても凹んでるし、ふてくされて寝る。でも僕らはだいたい笑い話にされる。みんなすぐネタにしたがる(笑)。

彼女の誕生日に何をあげるかも話題になったりね。それぞれの体力、モチベーションをみんなでシェアしている感じ。幸せの平均値は常に高めに保たれているかな!

ありがとう!

アルマハウスのみんなの話を通して、共に同じ屋根の下で暮らすこと、すなわち時間・空間をシェアすることが、信頼関係を作るうえで大切なことが分かった。

日夜顔を合わせる環境をあえて作ることで、不信感は自然と消え去り、真の信頼関係に繋がっていくようだ。

交わりのなさそうなメンバーの集い、”カキガラハウス”

2組目にお話を聞くのは、カキガラハウスのみんな。カキガラハウスのみんなはさきほどのアルマハウスとは違って、各自が異なることに取り組んでいる。

音楽をやっている方もいれば、アパレルショップ店員、映像ディレクター、スーツを着た一般的な会社員の方も。

様々なバックグラウンドを持った彼らの日常にあるシェアって一体…?

—シェアハウスをしようと持ったきっかけや、カキガラハウスができた経緯を教えてほしい。

今は6人なんだけど、もともと3人でルームシェアを始めたのが初めかな。これが3年前の2016年。

1人が1年早く東京に来て、1人が就職で東京に来て。それで、お金がなかったりとか、1人暮らしに漠然と不安を抱えてたのもあって、冗談半分でシェアハウスをしてみようよと話をして。

—面白そう! っていう好奇心と、お金が安くすむっていう2つの見方があると思うんだけど、どっちが強かったの?

面白そうっていう好奇心が強かったかな。一人で住むのって意外と大変じゃん?

そのうえで広い家にも住めるし、たがいの友達をたくさん呼んだら楽しそうだねって話をして。

友達をシェアするって言い方をするとあれだけど、そういうことができたらわくわくしない? なんて話したことを覚えてる。

2人で始めて1ヶ月後ぐらいにまた1人が遊びに来て、良いなあ住みたいと言いだして、そうしてまずは3人で始まったんだよね。

—住みたいって思ったのは、その1人はどういった点に特に惹かれたんだろう?

単純に寂しがり屋だったんだよね(笑)。もともと彼は会社の寮に住んでいて、ただ会社とは違うコミュニティが欲しいという気持ちがあって。

仕事の延長線上ではなく、まったく違うところに帰る場所があるのは良いななんて。

—その流れで3人で暮らすと。今は6人で住んでるけど、どういう流れだったの?

もともとのその家が契約更新の時期で、家を変えようという話をまずしてた。

3人でまた別の家探すのもありだねって話して。で、ちょっと動いてたときに、他の3人が別でルームシェアをしようと話していて。

—じゃあもともと別々で家探しをしてたんだ。

そうそう。で、2人は喋ったことがある程度、2人はほぼ会ったこともなく。でも6人で住んだら絶対楽しいよって言いだしたメンバーがいて(笑)。

挑戦したいというか試してみたい気持ちがあって、それで初の顔合わせ。

—すごい。そのときにどう思ったの?

それじゃあ試しに一緒に住んでみようかと軽いノリで決まった。今後どうなっていくかとか一緒に住んで大丈夫かななんてことは考えずに、3人で住むよりも6人で住んだ方が違いが増えて刺激的だろうって。

—本当に勢いだったんだね(笑)。でも物件を見つけるのって大変じゃなかった?

うん。もともとは広いワンルームみたいな感じだったんだよね。屋根裏まであって、合計すると150平米ぐらいある。

6人でわったら1人5万円もいかないくらいで。この家に住めるって考えると、本当にわくわくしたな。

ここが掲載されて、2日目に見つけてるんだよね。それぐらいあらゆる不動産サイトを掘りまくってて。

ルームシェアをしようって流行りだけど、現実問題すぐに始められるのは、2、3人だと思う。

—現在6人で成り立っているカキガラハウスも、いろいろなハードルを乗り越えてきたんだね。

たまたまの連続がつづいた奇跡みたいなものなんじゃないかって思う。そもそも僕らは世にいうシェアハウスではないと思ってる。

意味合いとしては同居に近くて、家をシェアするというよりかは、「なんかやるか!」をシェアする意味合いが強い。

家でもありお互いのプレイルームのような。作業場じゃないけど。

—なるほど。それで言うとみんな職業はばらばらだと思うんだけど、この家に住んでこうしたいという目的や目標みたいなものは共通してなにかあったのかな?

目的や目標があったというよりかは、テンションが一緒だからシェアハウスをしたというのが近いかな。

なにかに追い込まれて自分しか考えられないと思っているときは難しいけど、基本的にはみんな誰かがやりたいことはやってみたらいいし、邪魔をしないというスタンスをシェアしてる。

やりたいと思う対象がだんだん合ってきた感もあるし、最初この6人で住んだときには一人ぐらい誰かは居なくなると思ってたから、今のこの状況は奇跡に近いかな。

—シェアハウスって、そういう不安はあるよね。

うん、1年ちょっと続いてることでさえすごいよね。結果論、楽しそう、面白そう、この6人でいる環境でなにかしたいという想いが漠然とそれぞれにあって、それがきっかけでシェアハウスを始めたんじゃないかなと思う。

プライベートより面白さを優先した結果。友達の家に来てずーっと入り浸ってる感覚と別に変わらないかな。

—みんなで一緒にいれる空間って感じ?

人によってはそれが落ち着かないって捉える人もいるかもしれない、だから住めない人もいる。

あと、面白いことに6人がちゃんと集まるのって月1回ぐらいなんだよね。それこそ本当にばらばら。やってることも、生活してる時間帯もこのコミュニティの外にいる友達もあまり被らなくて、だから本当たまたまの同居に近いというか。

THE シェアハウスみたいな、都内でシティっぽいことやってやろうぜ! みたいな感じではない。

—僕らとしても、典型的なシェアハウスを取りあげるよりは、形としてシェアハウスしている人のそれぞれのスタンス、家賃が安くすむという主だった理由もあれば、珍しい理由もあると思っていて。その人たちなりにシェアハウスをどう捉えてるのかな、簡単にいうと効率性だけじゃない、他にどういった楽しみ方をしてるのかなっていうのを聞きたかった。

今後もし他にも話を聞く人がいたとしたら、僕らはわりと珍しい部類に入るかもしれないね(笑)。

—いままでコトの始まりに絡ませて考え方の部分を聞いてきた。シェアハウスに対しての考え方といったところで、一番最初はどういう気持ちがあったんだろう?

シェアハウスが良いと思った理由には、まずは自分が得られる情報量を日常的に増やしたいと思ったから。自分の知らない領域を人に教えてもらいたいっていう気持ちがあって、日常的に吸収したいから賛同してくれる人を集めた。

もう1個は、家の中を作り込むDIYをすごくしたかったから、人を増やせば面積もお金も増えると。最後は、最終的にまあ楽しくなるんじゃないだろうかって期待感があった(笑)。

メンバーにはクリエイティブ業界もいればスーツを着た一般的な会社員もいて。多分同じ殻のなかに居つづけたら、このままいくと僕らはつまらないおじさんになるだろうなっていう危機感みたいなのもあって。

業界といった大きな区切りも含めて、自分とは違う場所にいる人たちと日頃触れ合っておかないと、もし自分が一人暮らしや近いコミュニティにいる人とだけいたら、毎日仕事してだらだらして。

貯金は貯まるけど、今いるところから先には広がっていかないみたいな。

—日頃からシェアハウスが自分を未知の場所に出会わせてくれる”場”になっているんだね。シェアハウスをする前と今とで変わったって人はいる?

昔と今で全然違うメンバーがいて、彼はこのシェアハウスを始めてから、音楽やらカルチャーにまつわるいろんなイベントに行ったり、国内外のブランドの服に興味を持って手に入れたり、プライベートを本気で楽しむことをしだしたと思う。

アパレルのメンバーがいるので、スニーカーが欲しいなあって思ったときには相談したりして。普段だったらパソコンや店頭でしなきゃいけないことを、各分野に特化した人間Googleに聞ける(笑)。

—おたがいに知識をシェアして、無意識に助け合っている感じだね。逆に、ネガティブな面でシェアハウスが役に立ったことはある?

仕事で怒られて、「くっそ!」って思って帰ってはくるけどウェーイみたいな感じで迎えられたら、もうどうでもよくなっちゃう(笑)。

1人暮らしだとタイムリーに声かけてくれる人ってなかなかいないし、電話も社会人同士忙しくてできないし、落ち込んだテンションを引きずってしまうと思うんだよね。

だけどこういうところで過ごしてたら、本当に帰った瞬間一気に吹き飛ばされていく。

みんな愚痴を吐きだして聞くというよりかは、それよりも楽しいこと見つけてやろうぜっていうスタンスだから、ゲームするか! 音楽聴くか! 飲み行くか! みたいな(笑)。

でもそうやってすぐ行動に移せるのも、なにかしたいと思ったときにみんながいるからだとつくづく思う。

—でも、ポジティブもネガティブもうまく流れていく空気感があるのはどうしてなんだろう?

おたがいに対してリスペクトの気持ちがあるからかな。ちょっと気にくわないところもそりゃああるけど、最終的にいきつくのはリスペクトの気持ち。

多分シェアハウスをすると、良いと思うところが10個言えて、悪いと思うところが100個言えるようになる。そういうバランスだと思う。

メンバーの心情がだいたい読めてくるようになる。急にどうしたんだろ、きっとこれはあのことだろうなって、おたがい。ほぼみんなの想像の範疇。

そういった意味での信頼関係は非常にある。わかってるわかってるっていう信頼関係。

だから今このタイミングでこれを言ったら絶対に機嫌悪くなるだろうな、とか。その空気感が知らず知らずのうちにみんなわかってきてるね。

—一緒に屋根の下で過ごすことによりわかってくる空気感か。それは住み始めたころと比べて違う?

なんか最初は力んでたなあ。なんかしたいね、なんかしなきゃ。繋がらないと! って。

人呼んでBBQやったりとか必死こいて昔はやったけど、そーゆうのも大事やけど今はいい感じに肩の力が抜けて。

最初はせっかく6人で住んでるし背伸びしようよって意気込んでた。で、無理しちゃいけないここはあくまで家だっていうのが結局あって、それで落ち着いた。

—落ち着いたきっかけがあったの?

きっかけといったら一発目の「カキガラナイト」じゃない?

—カキガラナイト?

僕らのシェアハウスがある場所が蛎殻町(カキガラチョウ)というエリアで、そこから名前をとってカキガラハウスと名乗ってる。で、このシェアハウスで主催しているイベントが、カキガラナイト。

DJブースを設けたりしておたがいの友達を呼んで、パーティーのような形でなにかやりたいねと考えて始まったイベントかな。

別に仲が悪かったというわけではないんだけど、1個イベントっていう目的を共にして、一緒の方向見てなにかしたいと考えた結果がこれだった。

このシェアハウスをみんなに知ってもらいたい気持ちも非常に強くて、どうしたらみんなが来たがる家になるのかとか、シェアハウスっていいなと思ってもらえるきっかけを作りたくて。

その目的を考えたときに、ホームパーティーのような形で多くの人に来てもらえることが一番じゃないかと。

先日のカキガラナイトの様子。リビング中央にDJブースを置き、お酒を飲みながら思い思いの時間を過ごす。

—すごいね。でもこれだけの家の広さがあればできそうだ。

で、そのイベントですごい疲れたんだよ(笑)。終わって、一旦休もうとなったぐらいから地に足がついて、ここは家だしもうちょっとゆっくり気長にやっていこって、徐々に落ち着いてきたところで。

だからちょっと空いたんだけど、2回目をやったときは1回目より動員があったりして。2フロアを使って、4階には自分たちの荷物を置いてたんだけど、それを全部解放して。

やり始めたらとことんやっちゃうし、アイデアも出てくるから。やり出したらお金も時間も足りなくなって。だから手を抜くところと力の入れどころをどんどん見極めてきた。

普段の生活のときは気を抜いてて、家も汚いしだらだら過ごしてるけど、イベントが決まるとスイッチを入れて。

本業っていう別のことにも追われてるなかで、やらないとってなる。この空間、これがあることが今の生きがいの1つになっている。仕事のやらないととはまた別の感覚だね。

バンドをやっているメンバーは、イベントを始めてからライブのオファーが増えたりもして、この活動が次の活動に繋がっている例もあって。

—イベントを通して本業にも、副業にも、趣味にも影響を与えているんだね。この生活のなかで、特に思うことはある?

まずはいままで普通に過ごしてたら知らなかった人に出会えたことが大きい。1人だったら絶対にしないだろうなってこともできた。

あとは、自分のなかでこれ以上いったらダメだみたいな仕切りってあらゆることに対してあると思うんだけど、そうやって出会ってきた人たちを見ていると意外に大丈夫なんだなって。いい意味でも悪い意味でもそれはあったな。

さっきの情報量の話でいうと、シェアハウスのメンバーには映像をやっている人間もいれば音楽をやっている人間もいて。映像を作るにはやっぱり音楽のセンスが必要だったり、言葉のセンスが必要だったり。

メンバーのなかに広告代理店で働いている人間がいるんだけど、以前広告業界の若手が応募するCMコンテストがあったのね。

メンバー5人をキャストとして撮影して編集したんだけど、各場面でメンバー同士がアドバイスをしあって、良いものを作ろうとした結果ファイナリストになれて、入賞した過去もあって。

—それはすごい。情報量が一同にここに集まっているという環境が非常に大きいね。

何も成し遂げられてないから頑張らないとって気持ちがあるし、広告賞のようにどんどん形にしていけたらいいなって思う。やってる同世代が近くにいるから、正直めっちゃ悔しいし。

このままでいいんじゃないのかっていう気持ちと、現状で満足しちゃいけないっていう相反する気持ちがあって。この葛藤もシェアハウスをしているからこそ間近に感じられる気持ちかな。

—シェアハウスのみならず、モノや経験をシェアしていくことの醍醐味、さっきもシェアハウスだからこういう経験ができたと話をしてもらったんだけど、もしその他にもあれば聞きたい。

6つ脳があるというか。これが醍醐味で、結局良いことも悪いこともいっぱいあるんだけど、1人ひとりが違うことをやっているのは大きな価値。

で、人間だしよく落ち込んだりするんだけど、横のやつが笑って慰めてくれたりして、それだけでまとまったりとか。

そんな風に親や兄弟じゃなくて赤の他人と一緒に住むからこそ、まったく別の考えを体になじませられる。それは醍醐味だと思うかな。

—抵抗感は特になく?

多分友達同士だったら何言ってんねんこいつとか、壁を作ったりすると思うんだけど、壁を作れないんで。だからそこは打破するしかない。

分かち合うというか分かり合うしかないし、そういう努力を勝手にできるから人の幅としても広がると思う。普通に1人暮らししてたら嫌な友達は避けていくじゃん?

そうして仲良い友達が揃って自分ができあがっていくと思うんだけど、今、この6人と合わせなきゃいけないから、良くも悪くも。だからそういう意味では人としての幅はすごく広がっていって。

それがファッションだったり音楽だったり映画でも一緒だし、考え方とか女の子の好みとか、そういうのもひっくるめて全部入ってくるというか。

モノとか唯一性があるもの、特に形としてわかりやすいものってそれはそれですごく価値のあるものだと思うんだけど、こうやって形のない考え方とか抽象的な好みとか、価値観っていうのは幅を広げれば広げるだけいいと思うんだよね。

なので、それがシェアのすごく良い面かなと。ただ、全部が全部良いと思ってるわけではなくて、これだけ幅があっても僕はこれを選ぶなとか、様々な選択肢を知ってものを考えられるようになるのかな。

—1〜3まで知ってより、1〜10まで知ったうえで選びたいよねみたいな感じかな?

そうそう。こう考える人もいるんだなあってね。”幅”を知ることのできるスピード感は早いかも。やっぱりそれは対人関係において、仕事でも使えるスキルになるし。

形あるものより、考え方だったり思想に良い影響を与える気がしてる。違いを認めるっていう部分。

シェアハウスをしていて一番感じるのは、形のないものをシェアしていく魅力。

仕事というコミュニティであれば会社の理念があって、その理念のもとに考え方をシェアするし似た人間が集まるからフィルターができるんだけど、僕らは理念もなにもまったくない。

それがまた言わずとも言語化されていない共通の考え方が、メンバーそれぞれに自然とセットされているというか。

会社は1個目標があるからその通りにいかなくなってしまう人がダメになるけど、僕らは別にどうなっても全部正解。全部正解がゆえに難しいこともあるけど。

だからこそカキガラナイトをやるときに、単発で目的やそのもとにコンセプトが生まれるから面白い。そうなるとみんな意見やアイデアを積極的に出すし、本気でやる。

シェアハウスとしての目標がないから、ポイントごとに目標を作っている感じ。

目標がないからこそみんなばらけていて、各自が吸収してきたものをイベントという形で目標に置いてリアルに昇華させている。

正解がなくてみんなが自由にやれる、そういう環境を普段は担保していきつつも、ばらばらにならないようにポイントごとにイベントで統制していくような。

—メンバーの気持ちをまとめるためにイベントをしていく?

んー、それでいうと違うかな。ばらばらになりすぎたからカキガラナイトをやろうという流れではない。

ベースはばらばらで違いがあって全部正解で良くて、カキガラナイトは楽しそうだからやるっていう極論それだけで。

普段は各々外で別々のことをしていて、それを持ち寄ったりできるから、それが楽しそうじゃん。そこに義務感とか使命感はそんなにないかも。

体験をシェアすることとか、シンプルな話でいうと6人分の新しい情報がばっと出てくるわけだから、1人で勉強するより6倍速い。

そういう部分にシェアの魅力があって、なおかつカキガラナイトでこういう経験をできたとか、今こうやってインタビューされて話してるのもすごい楽しいとか、普段経験できないことを経験できること自体が醍醐味だと思うし、そんな感じかな。

—逆に、1人暮らししてたらって考えるとどうだったんだろうね。

想像してほしいんだけど、20代後半になって仕事してるなか、こんな風に6人で集まって普段からたくさん喋ってるんよ。仕事に無関係なことばっか。

そんな人たちってなかなかいないじゃん? 別に6人が集まったからといって必ずお酒を飲むわけでもないし。

単純に家をシェアして家賃が折半になるから安いとか、立地がいいところに住めるからいいとか、そんな物理的メリットだけじゃなくて、こういう関係性も作れるし、きっとこの生活を一生忘れないと思うんだよね。

結婚式に呼ぶかどうかはわかんないけど。

—さすがに呼んであげて(笑)。

冗談冗談(笑)。でもこれだけは言えるのは、自分だけの人生じゃ経験できなかったことをみんなの人生を使わせてもらって経験できてるし、その時間はかけがえのないものだって思うかな。

ありがとう!

カキガラハウスのみんなから話を聞いて、シェアの良さとして感じたことが大きく3つある。

1つ目は、今まで触れなかった世界に触れられる刺激、これから新しいことが待っていると思える期待感。

そんな常にワクワクできる環境を持てることは、シェアの大きな魅力の1つだろう。

2つ目に、生活をシェアすることを通して人との違いを認め合い、自分の幅を広げていけること。

世の中にはいろんな人がいて、いろんな考え方がある。それを日頃の生活から知っていけるのは、これもまた大きな魅力だ。

そして3つ目。なによりカキガラハウスのシェアの魅力としてあったのは、点々ばらばらでそれぞれが違う方向でがんばりつつも、カキガラナイトというイベントを通して1つにまとまっていること。

時間・空間をシェアすることで信頼関係を築いていけるのはシェアハウスの魅力。

それに加えて、ポイントごとに目標を作りシェアするというプラスワンがあることが、なによりこの結束力を生み出しているんだろう。

シェアの醍醐味って…。

アルマハウスとカキガラハウス。みんなで1つの方向に向かって突き進む前者と、各個人が己の道に突き進む後者。

一見大きく違って見える2組だけど、彼らの話に共通してでてきた言葉は、「時間・空間をシェアをすることで、タイムリーに他人と考え方や知識・経験を分かち合える」ということ。

つまりは、住んでいる人数分の知識量・経験が得られる、まさに話にもあった脳が5つにも6つにも増える感覚なんだろうな。

やっぱりシェアって、効率化・ミニマリズムといった、より合理的に生きるための考えという側面がメディアでは取りあげられがち。

だけどそれよりももっとコアな、「おたがいの違いを活かして、より人生を楽しむための種に出会えるチャンスが増えていく」という大きなメリットがありそうだ。

2019-11-09|
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