自分に合ったモノを持つということ。

最近流行りの”ミニマリスト”という言葉に代表されるように、自分だけでモノを所有することはある意味時代遅れ? なんて風潮がある。

でも、身の回りのモノをすべてシェアして生きていくのかというと、そういうわけでもない。

同じモノを持っていても、どこかでその人のモノにしかないきらりと光る特徴があったり、自分の”好き“や“こだわり“を大切にしている人がいる。

そこで、1つ目の記事で知ったシェアの素晴らしさに対して、自分の好きやこだわりといったものが具現化された、”一点モノ”を所有することについても見ていきたい。

真っ先に思い浮かんだのは、「革」だった。販売するときからひとつひとつが異なり、長年使いこむことで経年変化をしていく。

どんどん顔を変え、より自分色に染まっていく。それが革だ。革にはシェアという概念が入る隙のない、一点モノの魅力がある。

そこで今回は、自身で革を仕入れ、ひとつひとつ丁寧にハンドメイドで革小物を作りつづけているブランド「REEL」のデザイナーである宗片(ムネカタ)さんに、一点モノを持つことの理由や、自分だけのモノを持つことの意義について聞いてきた。

革小物ブランド「REEL」

2018年に祐天寺のセレクトショップ「feets」内に工房を構えた「REEL」。今年の8月に、同じ祐天寺にあるfeetsの系列店である「steef」内に工房を移す。

リールというブランド名には「巻き取る」という意味があって、自分の好きな古い時代のモノだったり、最新のデザインも巻き取っていきたいという意志が込められている。

また、関わりを持っていくさまざまな人たちから受ける刺激も巻き取っていきたいという想いも込められている。

店舗の販売のみならず、個人の要望に合わせて作るオーダーをおこなっていたり、本屋や花屋、そしてコーヒーショップと共に展示をおこなうなど、革小物への間口を幅広く設けているブランドだ。

店舗に入ると奥に工房が見えた。革の断片だったり、サイズを測るときに使うであろうメジャー。

「ここで1つひとつの革製品が出来ているんだ」と思うと、その美しい所作に目が釘づけになる。

—早速ではあるんですけど、ブランドを始めたきっかけを聞かせてください。

私はもともとアパレル業界で働いていました。ぼんやりと将来を考えたときに、手に職をつけたいと思ったことが始まりです。

父が生業として革職人をやっていて、継ぐ人がいないのはもったいないと昔から思っていたこともあって、修行して革職人になろうと決めました。

—お父さんが革職人ということで、幼い頃からその姿を見て革に対するこだわりや憧れを抱いていたんですか?

憧れというよりも、日常の一部に革があったから、私にとってはあたりまえの存在で。あたりまえのようにソファが革張りにされていて、ラグも革で。

_革製品に対して羨望の気持ちを持つというよりは、常に生活の縁には革製品があり、無意識のうちにそれらの持つ特異性に惹かれていた宗片さん。理想的な接し方だなと思う。

なので、革がみなさんの生活にもっと馴染んでほしいという想いもあって始めました。あと、革って実は自由に何にでも加工できるんです。そのことを知ってもらいたい思ったこともありますね。

日常で見ているものはもちろん、普段なかなか見ないようなものも含めて、”自分が形にしたいものに加工出来る”のが革製品なんです。

_革ジャンだったり革靴だったり、僕たちはどちらかというと保存や手入れが難しくて、扱いにくい存在として革を見ていたんじゃないだろうか。どうやら革への意識が変わりそうだぞ。

—そういった経緯がありご自身でブランドを立ちあげたと。ブランドでは、ここは譲れないといったポイントはありますか?

たくさんあります。アパレルで働いたあと、革のメーカーでデザインから企画に至るまでやらせていただいたんですけど、常にブランドに沿ったプロダクトを考えながら「自分ならこうするんだけどな」という気持ちを抱いていました。

たとえば、糸が細いもので繊細な、糸が見えないくらいのものが好きだったり。そしてロゴもさりげなく配置されているものが好きで、総じて極めてシンプルなものにこだわりがあるんです。

あと、特にこだわりたいのは革の素材で、一般的なクロムではなく、味がでやすいタンニンなめしを用いること。

—革の素材には大きく分けて2種類あるんですね。どう違うのでしょうか?

簡単にいうと、タンニンは木から出る油でなめしていて、クロムは薬品を使ってなめしているんです。出来あがった際の仕上がりが後者は表面がつるっとしていて、汚れがつきにくい。

ハイブランドの革製品を含めて、大多数がクロムを用いています。でも私は使っていくうちに味がでる革が好きなので、少数派ですが後者のタンニンを用いています。

さらに細かい話になると、革製品を作るために牛を育てるようなことはせず、食肉にされた牛の革を使わせていただいたり、革が出来るまでの背景も非常に大切にしたいと考えて作っています。

_こだわりを表すモノとして革製品があると思っていた僕たち。革にはさまざまな特徴があって、作る側もこだわりに適したものを選んでいるのだった。掘れば掘るほど奥が深いものだと改めて再確認。

—リールさんではオーダーの注文も受けつけているとお聞きしました。そのなかで、各個人の「ここはこうしたい!」といった既製品にはないこだわりが聞けるのかなと思ってます。そこで、特にこだわりが強いなあと感じた人はいますか? みなさんがどういった点を大切にしているのか知れたらと。

やっぱりひとりひとりこだわりは強いですね。他人と同じモノを持ちたくないというよりは、「自分が使いやすい、より自分に合ったモノを持ちたい」という人が多い印象です。

たとえば手帳カバーなど毎日触れるものは、ペン挿しをつけるかいなか、しおりつきかどうかなど他にもさまざまなこだわりがあって。面白いなといつも思っています。

あとは、「壁にさりげなく花を飾れるようなものが欲しい」なんて話をしたことから、試験管と革を用いて、壁にピンで留められるようなカジュアルなフラワーベースを作ったこともあります。

ここではこだわりを聞くだけではなくて、対話を重ねることでより考えているものに近い形に落としこんでいます。

_オーダーを頼んでいる人は、自分にどんなものが似合うのか、適しているのかをどうやら日々の生活から感じ取っているみたいだ。そうした点を会話をとおして知り、宗片さんが革という一点モノとして具体的に形にしていく。これこそまさに真の一点モノなんだろう。

—ご自身では、革製品のみならず大事にしていきたいモノ・コトはありますか?

アーティストの絵や写真家の写真は買うようにしています。全然売れていなくても、全然フォロワーがいなくても、自分がかっこいいなあと思うものであれば。

そこには手元に残したいという気持ちと、支持したいという気持ちと、2つの想いがあります。それとやっぱり絵画の場合は、画像じゃなくて、「実際に自分の目で見て触れて感じる」という点も大事かなと思います。

——-所有をすることがすなわち支持することにも繋がるんですね。

あとは、物事に対して普段から深く考えたいタイプなので、少数派かもしれないですが、ブランド物を買うのであれば事前にかなり調べます。

どういったブランドなのかといったところから、どんな人が作っているのかまで。ちょっとしたアイテムでも気になって調べますね。そして実際に手にとったり見たりして、検討します。

_宗片さんのように、支持という意思表明の表れでモノを所有するという考え方を持っている人は、たしかに少数派かもしれない。それでも、所有をするうえでそれだけ自分の視点が確立されていて、自分に適したものを選びとっていくことは、他人よりもさらにモノを納得感を持って選ぶことに繋がるし、使っていてより幸福感を抱けるに違いない。ブランドやロゴに商品の価値を見いだしているわけではなく、手に取り直接価値を感じてもらうことに重きを置いているのも、このブランドの考えに通じている。

—最後になりますが、今後どういう形でブランドをやっていきたいのか、お聞かせください。

やっていること自体に意味があると常々思っているので、ひきつづきものづくりに時間をかけていきたいです。そのなかで、みなさんの革製品に対する可能性を広げるためにも常に新しいものを作っていきたい。

数年前から取り組んでいるレザーステッカーもそうです。

—かわいい! ビビッときました。

紙のステッカーが多いなか、あえて革で表現する。そんな、既製品を革という形で表現することにも挑戦していきたいですね。

_通常のステッカーと比べて、革であるだけでぐっと所有感が増して、育てていきたいという気持ちになってくる。

1人ひとりが自分のこだわりを持って接する革製品。

革製品を持つことは、「経年変化といった形で姿が変わる過程を楽しむ」、「人と異なるものをというよりは、自分のものとして愛着を持って長く触れていく」など、シェアでは味わうことの出来ない貴重な体験を得られるものなんだ。

自分に合ったものは「ここがもっとこうだったらいいのに…」といった、日常の気づきから芽生えるものだという。

そんな一点モノを手に入れることで、より生活に彩りが生まれ、モノを大切に扱えるようになるんじゃないだろうか。

また、所有によって「支持をする」考え方もあり、自分の考えや好みを表明していくことにも繋がっている。

シェアをすることで周囲の人々と楽しさや喜びを分かち合いつつ、より自分に合ったモノを長く所有して愛用する。

どっちに傾倒するわけでもない、そんなちょうどいいバランス感が、僕たちの生活をより魅力的な日々にしてくれるのかもしれない。

店舗情報

■REEL
REEL Atelier

住所:153-0052

東京都目黒区祐天寺2-6-13 1F

OPEN 14:00 – 19:00 ( 不定休 )

連絡先:info@reel-needle.com

HP:http://reel-needle.com/

Instagram:https://www.instagram.com/reelneedle/

祐天寺駅から徒歩3分。
東口を出て100mほど歩いた左手にsteefがあります。 お店の扉を開けた奥の空間がREELのアトリエ兼ショップです。( 2019年8月に移転しました )

2019-11-09|
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