【顔の見えるお店】SLIDER STORE@三軒茶屋

歩く。僕は街を歩く。

街を歩いていると、そのときどきに目にするお店やその街の住人から、独自の空気感というものを感じるときがある。

たとえば原宿ならファッションカルチャーの聖地やカワイイであふれるポップな雰囲気、新橋なら高層ビルが立ち並び働く人たちが交差する気が引き締まる雰囲気、といったように。

つまりその街によって文化は異なり、そのカルチャーを作っているのは、1つひとつの個性あふれるお店や人の摩擦だと僕は思う。

なかでも少し都心から離れた街では、ちょっぴり大人だけれど、どこかセンスの光るムーブメントが起きているんじゃないかと、新しい匂いが僕の鼻を刺激するのだ。

今回訪れる三軒茶屋は、古着文化を中心に幅広いジャンルで、古くから根づいているカルチャーと若い世代の活力が入り混じる街。

「好き」を具現化したお店が沢山あると聞く。都会の喧騒から少し距離をおいた、にぎやかという表現が正しいだろう。

三軒茶屋に現れた、一癖あるセレクトショップ『SLIDER STORE』

そんな三軒茶屋に今年8月にオープンしたばかりの変化球なセレクトショップ、その名も『スライダーストア』。

スライダーストアのスライダーとはなにかと思う人も多いだろう。プールのスライダー、変化球のスライダーとどれも曲がりくねった一筋縄ではいかないようなネーミング。

まさにその通りで、このお店は良い意味で、”曲者”。店主の宮川さんは服に遊び心を加える事を大切にしていて、一般的な仕入れではなく、ここでしか買えないアイテムを揃えている。

また、スライダーとはアメリカの『ホワイト キャッスル』というファストフードチェーンの看板ハンバーガーの名。

小ぶりでかわいらしいその見た目をアイコンに、お手軽お手頃、比較的安価なアイテムを取り扱うことを謳っている。

もともとは多店舗展開するセレクトショップのバイヤーとして働いていた宮川さん。経験を重ねていくなかで、自分の想いをお客様に伝えることの難しさを痛感。

ならば仕入れから販売までを1人の手で行い、想いを具現化した宮川色の強いお店を作ろうと思ったことが開店のきっかけだったそう。

「鉄は熱いうちに打て」とはよく言ったもので、何事も行動しないと始まらないなと、宮川さんの言葉を聞いて思った。

お店に到着。

三軒茶屋駅から徒歩10分ほど、閑静な住宅街の中にひっそりとお店は構えている。

店外には宮川さん愛用のかわいらしい自転車や、見たことのないターコイズブルーのサボテン。

ハンバーガーとスケボーを組み合わせた特徴的なデザインの看板は、アメリカンストリートカルチャーを思い起こさせる。

この外観からしても宮川さんの独特なセンスが光っているなあ。さっそく中に入ってみよう。

玄関で出迎えてくれたのはこの縁起のいい「だるま」。

お店のマスコットで、『寿印』さんという伝統的な技法と現代カルチャーを織り交ぜた郷土玩具を作る方が制作してくれたそう。

スケボーに乗っただるまがどこか憎めない表情をしていて、とてもかわいらしい。

入ってみると、太陽の光とアメリカンなアイテムが混ざり合い、おだやかな休日を過ごすにはちょうどいいあたたかな空間が演出されていた。

アウターから小物まで、遊び心あふれるセレクトの数々とオリジナルコラボアイテムのユニークさが一際目立つ。

変化球なアイテムってどんなもの?

もう居ても立ってもいられなかった。ここからは僕らが気になったアイテムについて掘り下げていこう。

■RWR crew

宮川さんもよく愛用しているというこの大きくロゴが入ったUS企画のリバースウィーブ。

ただよく見ると裏返しだということに気づく。さすがは宮川さん、キレのある変化球を投げてくる。

リバースウィーブの裏起毛をあえて表に見せることで機能性の部分をデザインへと上手く変換させている。

前々からフリースのカットソー版や表面起毛感のあるアイテムが少しずつ普及していることをうけ、その流れをスウェットを裏返すことで表現したと宮川さんは語る。

リバースウィーブを普通に着れる反面、お店のロゴをあしらったプリントが裏起毛の部分にあり、今っぽく着こなすこともできる。

一度で2度着れる、お得なスウェットだね。

また袖の部分にはスライダーストアのロゴが刺繍されているところもオリジナリティを感じさせる。

ただ驚いたのは、裏返して無地の状態にすると、バンズに挟まれたチャンピオンロゴが顔を出すということだ。

Cロゴは目玉とも呼ばれるゆえ、バンズと目玉で「エッグバーガー」と呼ばれるそう(笑)。

細かいところまで遊び心を忘れない、スライダー精神が存分に活かされた1点。

■Knapsack 1.25

小物アイテムも独特なものばかりで、特にこの「みやがわ」とタグの入ったナップサックが一際目立っている。

これは武蔵小山にある老舗山用品店の「みやがわスポーツ」さんとの別注アイテム。

もともとバイヤー時代から愛用していて、名前が同じという縁もあり、どうしてもこのお店に置きたいと思っていたという。

そもそも卸という概念がない「みやがわスポーツ」さんだが、何度も宮川さんがお店に出向き猛アタックをしかけ、最初は見向きもしてくれなかった店主をなんとか説得し作ってもらえることになったそう。

ナップサックは店舗で作っている物よりも2サイズ上げてもらったり、今は店舗販売されていないトートバッグ(この日は人気で売れてしまっていた)もお店のために復刻してもらったり、お話からも相当貴重なアイテムだということが分かる。

ただそんななかでもヒモの色を選べるようにしたり、バッグの中にはタグを入れたりと、オリジナリティへの工夫は怠らない。

リスペクトの意味を込めて正面に貼られる「みやがわ」の文字は、渋くてカッコいいんだ。

■RELAXFIT by supermarket

このデニムとコーデュロイのパンツ。ウエスト部分のデザインが斬新で素通りできないだろう。

なんとこの<リラックス フィット>というブランド、古着のリメイクなど中心に活動している「GILET」から派生したラインで、もともと宮川さんがいたバイヤー部隊も興味を持っていたそう。

来春くらいから取り扱いが始まるということで、今後注目度がグンと高まるブランドだ。

デニムを開くとこんな感じに。そのブランド名の通りシルエットはゆったりと、サイズレンジはワンサイズ。

ウエスト部分をマジックテープで調整ができるのでストレスを感じない。お客さんのなかにはカップルやご夫婦で穿いているなんて方も多いそう。

愛をつなぐ、なんて素敵なパンツなんだろうか。

ご近所付き合いが生まれる、地域の繋がり。

ここまでいくつかアイテムを紹介してきた。

宮川さんの周りにはさまざまな人が関わっていて、若いお店でありながらも賑やかさを感じられたのは、その「繋がり」があるからなのだろう。

そもそもなぜ、ここ三軒茶屋をホームにお店を構えることになったのか。そこには宮川さんが愛してやまないハンバーガー屋の存在があったのだ。

—チトセ:そもそもここ三軒茶屋にお店を構えようと思った理由は?

宮川さん:もともと近くで働いていてこのエリアに馴染みがあったことと、近くにお世話になっている「ベーカーバウンス」さんというハンバーガー屋の存在が大きな理由ですね。あと年に1回ですが、太子堂八幡のお祭りが目の前で楽しめるのも決め手となりました。

—チトセ:ベーカーバウンスさん、このTシャツにプリントされたお店ですね! どういった繋がりなんでしょうか?

宮川さん:このお店を開く前にベーカーバウンスさんで1年間アルバイトをしていたんです。会社勤めを辞めて個人で契約をいただきながら洋服の仕事をするなかで、少し時間に余裕ができたのでせっかくならと思い、興味のあったハンバーガー屋で働いてみたという感じです。

—チトセ:そうだったんですね。ではこのTシャツもそのご縁があって作られたものなのですね。

宮川さん:そうですね。お店を自分がオープンする時にオーナーさんから「作ってよ。販売はお前のところだけでいいから。」と言葉をかけていただいて。

—チトセ:オーナーの兄貴肌な部分が垣間見えますね。Tシャツは2色展開なんですか?

宮川さん:そうです! もともとは白だったんですけど、ケチャップがついて汚れが目立つからという要望もあって(笑)、黒も作ったんです。

—チトセ:それではデザインの部分もオーナーさんとお2人で相談しつつ作ったんですか?

宮川さん:いや、このTシャツのデザインは自分で勝手に決めちゃいました(笑)。もともとベーカーバウンスさんが当初から掲げていたキャッチフレーズ「The best diner in Tokyo」をバックデザインに入れて、下に住所を置いて。ベースはわかる人にはわかるニューヨークの「THE GOOD COMPANY」というブランドの形を使っていて、そのバックプリントのイメージを落とし込みました。あとは7オンスのアメリカンボディが好きで、アメリカ人専用のような雰囲気で丈のわりに身幅が広くなっています。サイズ感も今っぽくて気に入っています。

—チトセ:ボディの感じもベーカーバウンスさんのアメリカンな雰囲気とぴったりですね!

宮川さん:ありがたいことに全国にファンがいる有名店なので、通販の希望も受けています。売れてくれればノベルティにもできるとおっしゃってくれて。

—チトセ:素敵です! このTシャツを着て働いている方ともお会いしてみたいですね。

宮川さん:それなら本当にすぐ近くなので行ってみるといいですよ! ついでにハンバーガーも食べてみてください。あそこのボリュームと自家製ケチャップには驚かされますよ(笑)。

宮川さんの話を聞き、お昼どきということもありお腹が空いていたので、言われるがままに僕たちはベーカーバウンスさんへ向かうことに。

<次頁:ベーカーバウンスから若いお店への眼差しを知る。>

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